「小さい会社こそ、大きなことができる」 ―Movable Type開発者に聞く

川崎裕一(ネットイヤーグループ株式会社/Jnutella.org)2003年02月13日 10時06分

「Blog(ブログ)」という言葉があちらこちらで聞こえるようになって久しい。

 Blogとは一般的に、書き手が関心を持ったニュースや出来事について書いた記事(エントリーまたはポストと呼ばれる)が、元情報へのリンクと共に時系列に沿って掲載されているサイトを指す。

 米国ではすでにBlogという言葉が一般紙でも取り上げられる程に定着し、時にはマスコミの報道に影響を与えるまでになっている。米国で急速なBlogが広まった理由として、BloggerRadio UserLandなど、初心者でも簡単にBlogを作れるツールが存在が登場したこと、BlogdexDaypopといったBlogコミュニティや、Blog同士が直接つながるシステムがあり、面白いBlogの話題が「口コミ」で急速に広まることなどが挙げられるだろう。

 そのBlogの大きな流れの中で、現在人気を博しているBlog作成ツールのひとつにMovable Typeがある。

 Movable Typeは、Blog同士をつなぐTrackBack機能やカテゴリー分け機能、エントリーへのコメント追加機能といった特徴を備えており、デザイン変更に関する柔軟性が極めて高い。そのため、米国にとどまらず、日本を含めた世界中で注目されているBlogシステムなのである。

 今回、CNET JapanではMovable Typeの開発者であるBenjamin(Ben) TrottとMena Grabowski Trottにインタビューを行い、Movable Typeがどのようにして生まれ、どのようなビジネスを行っているのか、今後どのような展開を見せるのかについて聞くことができた。

 なお、今回のインタビューにはネオテニーの事業企画部マネージャーである南一哉氏にもご参加いただいた。ネオテニーは、Movable Typeの日本語化を行うなど日本におけるMovable Typeの啓蒙活動を行っており、今回のBen TrottとMena Trottの来日も同社の招きにより実現したものである。

Ben:Benjamin Trott
Mena:Mena Grabowski Trott
南:ネオテニー事業企画部マネージャー 南一哉氏


Movable Typeを立ち上げた経緯について教えてください。

Mena:私はMovable Typeを立ち上げる前から、Bloggerというシステムを使ってBlogを書いていました。しかしもっと色々な機能のあるBlogシステムが欲しかったので、自分たちのためにBlogシステムを作ったのがMovable Typeの始まりです。その後、システムの評判が口コミで広まっていったため、誰でも使えるようにシステムをリリースしたんです。

 ユーザーから「インストール方法がわからない」とか「使い方が分からない」といった問い合わせが寄せられるようになり、そのサポートをしているうちに自分たちの時間が割かれるようになってしまった。そこで、Movable Typeを自分たちの仕事にしてしまったわけです。

 この仕事を受ける会社として、2002年7月頃に「Six Apart」を立ち上げました。Six Apartの主な事業は、Movable Typeの新しい機能の開発、およびインストールサービスの提供です。また、新たな事業としてホスティングサービスの立ち上げも計画しています。現在、Six Apartは私(Mena Trott)とBen Trottによって運営されています。

Movable Typeを作ったのは、Movable Type以前のBlogシステムに何か不満があったからですか?

Ben:以前のBlogシステムは1カ所のサーバでホスティングされており、そのサーバやネットワーク接続に依存していたため、ユーザーは自分で使いやすいようにシステムをいじることができませんでした。Movable Typeは、自分でソフトをサーバにインストールするため、以前のBlogシステムに比べてユーザーの裁量権がかなり広がっています。

Mena:その中でも、以前のBlogシステムに比べて特徴的なものは、カテゴリー分け機能、コメント追加機能、ページテンプレートの制御機能等ですね。

 Movable Typeは2001年10月にリリースされました。カテゴリー分け機能とコメント追加機能は当時からMovable Typeの特徴的な機能であったと思います。私が「こういった機能が欲しい」というと、Benがそれを実装するような形で新しく機能が追加されていきました。また、ユーザーが開発、追加してくれた機能もあります。ただ、私自身のBlog(dollarshort.org)ではそれほど多くの機能を使っていないのですが(笑)。

Six Apartという社名の由来は何ですか?

Mena:私とBenの誕生日が6日離れていることにちなんでいます。Benは1977年9月22日、Menaは1977年9月16日生まれです。

Movable Typeを始める前はどのようなことをしていたのですか?

Ben:私は大学卒業後、Exciteに勤めていました。Menaはサンフランシスコにある小さなウェブデザイン会社の立ち上げに関わっていました。私はそこに転職し、ウェブサイトのプランを練ったり、コンテンツマネジメント・システムを作ったりしていました。

Mena:私はデザイナーで、Benはエンジニアでした。つまりBenはバックエンドで、私はフロントエンドということになります。

一日どのくらいのBlogを見ていますか? また、好きなBlogはありますか?

Ben:1日で100くらいのBlogを見ています。Macintosh用のニュースリーダーであるNetNewsWireを使って効率よく巡回しています。私は特に、技術的なBlogに関心があります。NetNewsWireを使うことで、Blogの新しいエントリーが簡単に分かるので便利ですよ。

 好きなblogを1つだけあげるのはむずかしいですが、強いて言えばanil dashかなぁ。

Blogの定義について教えてください。日本では日記とBlogの定義を巡って議論が起こっています。

Mena:米国でも似たような議論が、「ジャーナルとBlogの違いは何だ」という感じで行われてきました。両者の大きな違いは、「投稿された時間順に掲載される」ことだと思います。

 Blogでは伝統的に、
・一番新しいエントリーが、トップページの一番上に載る
・他のサイトに向けた外向きのリンクが含まれる
という特徴があり、これらがジャーナルと異なる部分だと思います。他にもアーカイブ(履歴、書庫)等があるというのも定義に含まれるかもしれません。

 米国では、一般的にジャーナルは個人のものであり、個人の経験が語られることが多いのに対して、Blogは記事に対する注釈やコメント、それに外部のサイトへのリンクがあります。Blogで個人の出来事や経験が語られることはあまりありません。

Ben:そういう意味でMenaのBlogはどちらかというとジャーナルや日記に近いものだと思うね(笑)

Mena:各エントリーに対してコメントをつけるという文化も、Blogの特徴かと思います。ジャーナルや日記にはあまり見られないので。

Movable Typeのユーザー数は、現在どのくらいですか?

Mena:現在までのダウンロード数は、6万から7万くらいですね。その中の1万5千件くらいがアクティブユーザーだと思います。もちろん1回のダウンロードで複数のコンピュータにインストールすることもできるし、1つのサーバにインストールされたMovable Typeを何人か共同で使うこともできますから、なかなか正確な数字はわかりません。ちなみにBloggerは数百万件の登録ユーザーがいるようですね。

1万5千件のユーザーのうち米国以外のユーザーはどのくらいいるのですか?

Mena:Movable Typeにいただいた寄付を見ると、ある程度は推測できます。大多数は米国ですが、15%くらいが米国以外という感じでしょうか。おそらく米国に次いで欧州が2番目でしょう。欧州の中でも英国が大多数で、その次が東ヨーロッパだと思います。また、ブラジルなど南米のユーザーも多いです。

Ben:Movable Typeは日本語、ポーランド語、ノルウェー語、スペイン語、イタリア語に対応しています(外国語版に関するページ)。こういった外国語版は「自分たちの言語でMovable Typeを紹介したい」というユーザーの強い要望から生まれることが多いですね。

Movable Typeで動いている有名なBlogとしてはどのようなものがありますか?

Mena:ジョーイ(ネオテニーの伊藤穣一氏)のかな?(笑) Dan Gillmor、Howard Rheingoldなどがありますね。

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