日本IBM社長の橋本孝之氏が、2011年の事業計画において興味深いコメントをした。「日本IBMは、メインフレームにフォーカスする。そして、メインフレーム事業にドライブをかけたい」と宣言したのだ。
今、メインフレームの置かれた立場は危うい。
メインフレームと言えば、柔軟性や迅速性が求めらている現在のITニーズにはそぐわないコンピューティング環境の代表として「恐竜」のように比喩されたり、新規投資へのシフトを阻害する保守費用増大の「元凶」、そしてベンダーロックの環境を作り上げる「悪者」のように捉えられているのが現状だ。
それにも関わらず、日本IBMはメインフレーム事業の拡大を、2011年の柱のひとつに置いたのだ。
橋本氏は、「米IBMの2010年第4四半期(2010年10~12月)の実績では、メインフレーム事業が前年同期比69%増となっている。ビジネスを加速するためにメインフレームを活用するという動きが出ている。日本でも同じ状況を作りたい」とする。
日本IBM、システム製品事業担当専務執行役員の薮下真平氏は、「日本IBMでは、米国ほどの成長にはなっていない」と前置きしつつも、「昨年(2010年)は2010年代を支えるテクノロジ、製品を投入できたと考えている。さらに多くのパートナー、カスタマーにそのテクノロジの意味を理解してもらった。成長の角度を米IBM並みに上げていきたい」と語る。
2010年を振り返ると、2月には「System z」と製造技術を共有している「POWER7」によるチップの進化にはじまり、7月には「zEnterprise」を投入。さらには、「DS8700」によるストレージの最適化、買収した「Storwize V7000」によるミッドレンジディスクの革命というように、zEnterpriseを取り巻く環境は大きく進化した。一方で、ユーザーのITを取り巻く環境は、複雑さが増す中で、部分の最適化から全体最適への道が模索されはじめている。
これらの動きをとらえながら、「物理的なシステムを統合し、運用管理も一元化した環境や、高度なセキュリティを実装したエンタープライズ、SOAの迅速な展開が求められている。そこに、zEnterpriseが注目を集めている理由がある」(薮下氏)とする。
そうした動きを裏付けるように、橋本氏も「数1000台のサーバを、数10台に統合することで、データセンターが不要になる、あるいは省電力化が図れるといった実績が出ている。あるSAPユーザーは、メインフレームに統合したことで、47%の電力削減、36%の設置スペースの削減、管理工数の大幅削減という結果を出した」と具体的な事例を挙げる。
欧米では、メインフレームが統合化において、ひとつの潮流を作り始めていることを強く訴える。
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