ここでのキーワードは、「マルチアーキテクチャ」だ。
橋本氏は「こうした案件に共通しているのは、zOSを利用するのではなく、JavaやLinuxを利用する形態だ。旧来型のメインフレームの売り方ではなく、新たな時代のメインフレームの売り方を推進している」と説明する。
薮下氏も「日本では、メインフレームといった途端に“オープンではない”と受け取られてしまう。Linux、Java、XMLといったオープンな技術を採用したマルチアーキテクチャがzEnterpriseの特徴。今や、zEnterpriseはメインフレームというよりも、“ハイエンド基幹サーバ”こそが適切な表現であり、もはやオープンシステムとしてとらえるべき製品である」とする。
「オープンシステムの条件が、ベンダーロックされないOSを採用している点だとすれば、zシリーズは既に10年間に渡ってLinuxを採用している。オープンシステムの一角を占めるシステム。そろそろzシリーズをオープンシステムの仲間だと認識してもらえないだろうか」(薮下氏)
同社によると、日本においてSystem zを利用しているユーザーのうち、約30%がLinuxを稼働させており、既に3100以上のアプリケーションが「Linux on System z」上で利用可能だという。
「10年前には、『0.5GHzのCPUパワーでは、レスポンスが悪く、スループットにも問題がある』と指摘されていたが、今では他社のハイエンドサーバを超える性能を実現している。パフォーマンスについては、十分に“お釣りがくる”ほどになっている」(薮下氏)とし、橋本氏も「欧米の企業では、メインフレームは投資コストが高くつくという認識は、もはやなくなっている」と指摘。既にメインフレームの古びたイメージは「過去のものになった」と払拭を図る。
日本IBMは1月、システム製品事業においてマーケティング部門を新設した。
「IBMが提供するテクノロジを、より明確な形でわかやすく提案することを目的とした組織」と、薮下氏は語るが、その大きな役割のひとつは、zEnterpriseのイメージを、メインフレームからハイエンド基幹サーバへとシフトし、オープンを機軸とした新たな顧客を獲得することにある。
「日本のユーザーに、zEnterpriseはオープンシステムであると、ぜひ、認識してもらいたい」とする一方で、「ただ、どうやってこれを伝えていくのかが課題」ともいう。日本IBMは、zEnterpriseに対して今後も「メインフレーム」という言葉を継続的に使っていくのか、それとも、マルチアーキテクチャやオープンシステムという言葉を前面に出し、「ハイエンド基幹サーバ」としていくのか。
これについては、日本IBMの中でもまだ結論が出ていないようだ。マルチアーキテクチャと高いスループット、信頼性を同時に実現する技術の進化スピードに、市場環境やマーケティングが追いつけていないとも言えそうだ。
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