アジアや中東などの新興国に対して、日本のエコ技術を「官民一体」となって売り込もうという論調や、ライバルの国と受注を争って「勝った、負けた」というニュースが、テレビや新聞を賑わすようになった。
2009年頃に比べて、ビジネスマンや政府の意識が大きく変わった(参考)
筆者らクリーングリーンリサーチ(ルビーインベストメント社)は、2008年の初頭から、主に日本のエコ技術に着目して、欧米の技術・投資動向の調査を継続しており、2009年の終わりからは、アジアにおいてグリーン分野での成長企業への資金の提供を行っている。
2010年には、「クリーングリーンフォーラム」と題するビジネス交流会を、東京と横浜において5回開催した。技術を有する大企業、中堅企業に加えて、コンサルティング会社や金融といった皆さんの多くの参加を得た。「スマートグリッド」といった、バズワードの登場もあり、関心は確実に高まっている。
しかしながら、日々のビジネスの場で、「最近の環境技術(クリーンテック)の動向は……」や、「グリーンビジネスはアジアで急成長していて……」と話題を切り出すと、目の前の相手が、ややウンザリした表情になる。
横文字は、どうしても日本でのビジネスの場面で訴える力が弱いものだが、「環境技術」の場合、日本語にしても、いまひとつ意味や輪郭がハッキリしないのである。
2009年は、洞爺湖サミットや、民主党の国連演説、コペンハーゲンでのCOP10など、「低炭素」が大きなキーワードとなった。
ただ、グリーンビジネスは、明確な定義はないものの、通例、以下の4つの分野を含んでいると説明することが出来る
上記4分野はいずれも、一方では、グローバルに需要が急激に伸びており、他方では、様々な技術革新により新たな市場が創出されているのである。
2009年来の世界金融危機で、環境の分野への投資が積極的に流れ込んだ(需要の創出とイノベーションの促進の双方)。
ところが、ヨーロッパでは財政出動が息切れして、いくつかの国の財政危機から、低炭素どころではないとの分析もある。また、アメリカでは、オバマ民主党も、中間選挙で敗北し、環境分野への財政出動や、環境規制に共和党がだめ出しをするのではないかとの分析もある。
筆者は、金融危機の際に100兆円といわれた公的支出の2割程度は、「仕分け」して見直すことは、むしろ健全な議会の役割と考える。
一例として、アメリカで、「ARPA-e」というエネルギーの革新的なR&Dへの政府資金のうち、400億円(1ドル100円で概算)程度は、共和党の意向でストップされた。その一方で、2009年に初めに打ち出されたオバマの経済対策65兆円のうち20兆円程度が、インフラ、エネルギー分野での支出と言われているが、これらは各州各都市の産業と、連邦政府の資金が50%ずつマッチングされて(日本で言えば50%の国からの補助金)、既にプロジェクトが動き始めており、これらの資金に急ブレーキを掛けることは現実的ではない。
上記のグリーン4分野とも、中国、インド、インドネシアといった東南アジア諸国をイメージすると莫大な需要があり、投資が計画されているのである。
アジアの水分野への投資資金だけ見ても、2030年までの20年間で、10兆ドル(800兆円)の投資が見込まれている(米ブーズアレンハミルトン試算)。全世界では、22兆6000億ドル(約1800兆円)の投資が水分野だけでも見込まれているのである。
個別の分野については、今後詳しく紹介していく。
2011年から、この連載をを通じて、より多くの皆さんとの交流を図るべく、企画を練っているところである。
筆者らは、コンセプトを提示すること自体も、重要であるし、まだ浸透が足りていないと考える。ただ、さらに重要なことは、多くの企業が、実際のビジネスとして実行していくことであり、市場や投資と技術のマッチングの場(フォーラム)が形成されるよう、多くの読者の参加を呼び掛けたい。
福井エドワード
ルビーインベストメント株式会社
1968年、ブラジル・サンパウロ生まれ。幼少を米国シアトルで過ごす。1992年、東京大学法学部卒業、建設省(当時)入省。1997年、イェール大学スクール・オブ・マネジメント卒MBA。アクセルパートナーズ(サンフランシスコ)、みずほ証券投資銀行グループを経て、2004年からプライベートエクイティ投資コンサルティング会社ルビーインベストメントリサーチ。現在、同社が設立した研究所「クリーングリーンリサーチジャパン」のマネジングディレクターを務める。著書「スマートグリッド入門」
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