最先端材料市場、有望次世代デバイスは「発電、蓄電」「ディスプレイ、照明」--富士キメラ総研

富永恭子(ロビンソン)2010年04月01日 10時42分

 富士キメラ総研は、アドバンストマテリアル(最先端材料)と、アドバンストマテリアルが採用されている、また今後採用が期待される有望な次世代デバイスの世界市場について、「2010 アドバンストマテリアル R&D REPORT」にまとめた。

 この報告書では、アドバンストマテリアルとして「有機材料」6品目と「無機材料」10品目、有望な次世代デバイスとして「発電、蓄電デバイス」11品目と「ディスプレイ、照明、他」8品目の開発動向と市場予測を行っている。また、主要メーカー及び研究開発機関20件の開発関連の事例を研究した。

 有機系アドバンストマテリアルの世界市場は、2009年は6億円となったが、その大部分が「電気二重層キャパシタ」の電解質用途で市場を形成し始めている「イオン液体」だったという。また、2012年には、照明用の「有機EL」材料市場が立ち上がると予測している。

 無機系アドバンストマテリアルの世界市場は、有機系と比較して市場形成している品目が多く、2009年の市場は2087億円となった。自動車用部品などに使用される「金属マトリックス複合材(金属を母相とする複合材料)」が市場の80%強を占める一方で、ナノサイズの材料の開発が活発化しているという。2011年〜2012年以降は、特に発電、蓄電デバイス関連の需要を中心に拡大すると予測している。

 また、有望次世代デバイスの世界市場では、発電、蓄電デバイス11品目の市場が2009年に348億円、2020年には5兆6251億円まで伸びると予測。2009年時点では「自動車用リチウムイオン二次電池」が83%、「電気二重層キャパシタ」が16%を占めているという。他に燃料電池の実績があるが、それ以外の多くは2015年前後に市場が立ち上がると予想している。また、2020年に向け自動車用リチウムイオン二次電池が大幅に増加し市場をけん引するが、「色素増感太陽電池」や「有機薄膜型太陽電池」など新型の太陽電池、振動や熱電といった新方式の発電モジュールの成長も市場拡大に貢献するとしている。

 同じく有望次世代デバイスとされるディスプレイ、照明、他8品目の市場は、2009年が268億円、2020年には5844億円と予測。2009年時点では「電子ペーパー」が95%を占めており、2015年にかけて電子書籍や棚札、値札、広告およびポスターを中心に市場が拡大、年率20〜30%増の伸びを示すと予想している。他には「マイクロフルイディスク」(微細加工技術を利用してシリコンやガラス、樹脂などの基板表面に流路や回路を形成して反応、分離、検出を行うチップ)の実績があるが、それ以外はサンプル出荷程度か研究開発段階だという。また「有機EL照明」は2011年から実績が立ち上がり、施設照明、店舗照明を中心に拡大すると予測している。その他は2015年前後から市場が立ち上がる品目が多いだろうとしている。

 さらに報告書では、アドバンストマテリアルにおける注目市場として「次世代有機EL材料」を挙げている。これは水銀不使用で環境性に優れ、紫外線を発しないという特徴を持った次世代の有機EL発光層で、照明、15インチ以上のテレビ、フレキシブルディスプレイでの用途を対象としているという。現状はサンプル出荷にとどまっており、課題は低価格化と、ディスプレイ用途では大型化への対応、照明用途では発光効率の改善と長寿命化だとしている。

 今後、次世代有機EL材料市場は、まず照明用途が2011年頃から立ち上がると予測。15インチ以上のテレビ用途は韓国LG電子が15〜20インチのものを発表しているが、市場投入は2011年から2012年頃と予想している。これにより同市場は、2020年には1600kg、39億円が予測されるという。また、フレキシブルディスプレイ用途は、実用化されるとすれば早くて2020年前後だろうと推定している。

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