ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)「GREE」を運営するグリーの快進撃がとまらない。10月14日に2010年6月期業績予想の上方修正を発表。グリーが今期の業績予想を示したのは7月末の決算発表時であり、それからわずか2カ月半で増額修正に至った。
グリーは今期の非連結売上高は従来予想233億円から271億円(前期比94.3%増)、経常利益は同119億円から139億円(同66.9%増)、最終利益は同64億円から74億円(同65.6%増)へそれぞれ増額した。会員数は9月末に1500万人を突破しており、ページビュー数の拡大に連動して広告収入も拡大。規模が拡大する一方で、コンテンツARPU(1人当たりの売上高)も高水準を維持している。データセンター増強や、広告宣伝費の積み増しなど、経費も当初予想より増額するが軽く吸収する見込みだ。
7月末の決算発表時に業績予想を示した時から保守的で増額修正の余地があると指摘されていたが、第1四半期(7〜9月)決算を発表する前に増額修正を発表したことは株式市場に驚きをもたらした。業績計画の上方修正を受けた10月15日の取引でグリー株は上昇したが、株式市場は3月期決算企業の9月中間決算シーズン入りを目前に控えて手掛けづらい環境となっており、目先的には上値の重い展開が続いている。
為替市場の円高ドル安傾向が継続していることから輸出企業の業績への警戒感が底流しており、自動車や電機など製造業の多くには為替差損が懸念される状況にある。中でもグリーを含むインターネットサービスセクターは収益の100%を国内で稼ぐ内需企業が多く、多くの投資家が懸念する為替市場に影響を受けにくい収益体質を持つ。国内景気の悪化で広告収入の減速が不安視されていたが、ここにきて有力メディアを手掛ける企業には底打ち感も浮上してきている。グリー株は目先的に株式市場全般に歩を合わせて上値の重い展開となっているが、決算シーズンが本格化してくれば、業績好調なインターネットサービスセクターの中核銘柄として再認識され、人気を集める可能性がある。
今回の業績予想上方修正を受け、証券アナリストの評価も高まっている。シティグループ証券では10月14日付のリポートで、ライトユーザーが増加しているにもかかわらずARPUが高水準で推移していることを評価。会社側の増額修正が下期を控え目な数字のままにしていることから、なお保守的で増額余地があると指摘している。ターゲットプライスは4200円から5300円に引き上げた。このほか、国内系証券では30代以上の課金主体の有料ユーザー数の増加ペースが高まったもようだとコメントしていた。
株価への影響はほとんどなかったが、グリーは9月末、「モバゲータウン」を運営するディー・エヌ・エーにゲームの著作権を侵害されたとして、東京地方裁判所に提訴していた。「モバゲータウン」が提供する釣りゲームがGREEのゲームに酷似しているという。インターネットサービス業界でのコンテンツの著作権問題はSNS内のゲームに限らず多く見られる問題であり、今後も株価の大きな足かせにはならなそうだ。
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