米国時間3月24日、ZDNetのJason Perlow記者は、4月3日(米国でAppleの熱狂的ファンたちがiPadを手に入れ始める日)がKindleの終わりの始まりの日になるとして、Kindleの追悼記事を書いた。
この記事は、iPadがKindle(少なくとも最上級機種のKindle DXと比較すると)を価格でも性能でも上回っているという点では正しいかも知れない。しかしiPadは、より重要な要素である、顧客を疎かにしないという点についてもKindleより優っていると言えるだろうか?ここではAppleがAmazonに学ぶべき点を紹介する(ただし、公平性を保つため、AmazonがAppleに学ぶべき点も近日中に紹介する予定だ)。
AmazonのKindleは、Amazonの電子ブックを配信するハードウェアプラットフォームとしてスタートした。しかし最近では、それ以上のものになっている。Citi Investment Researchによれば、Amazonはなんと3500万冊もの電子ブックを販売しており、これは電子ブックの全販売冊数の80%以上にあたる。
Amazonのこれまでの戦略は、Appleのそれの正反対だ。Amazonは本当の商品は本であり、電子ブックリーダーではないと考えている。カミソリの本体だけでなく、カミソリの刃も売るのが商売だという古くからある考え方は、電子ブック市場においても正しい。Amazonは依然として電子ブックをDRMで保護している一方で、他の人にもKindleリーダーを作れるというやり方ではなく、他のプラットフォームにもKindleリーダーを移植していくという方法でKindleフォーマットを広めている。
今では、Kindleの電子ブックをiPhoneでも、PCでも、ラップトップやネットブックでも、BlackBerryでも、そして(Appleが血迷わない限り)iPadでも読むことができる。Android端末では、まだKindleの電子ブックを読むことはできないが、特に企業間の摩擦があるというわけではないため、Androidで使えるKindleリーダーが実現するかどうかは、プログラミングをするかどうかという問題に過ぎないと思われる。
Amazonは、Kindleのソフトウェアと電子ブックを、Kindleのハードウェア以外のデバイスでも利用できるようにすることによって、自社の流通戦略のみならず、何百万人もの顧客が購入した商品についても、将来にわたって盤石なものにしている。
Kindleの電子ブックは、Kindleのハードウェアを使わない場合や、Amazonがハードウェアを生産中止にした場合でも、他のプラットフォームで読めることが分かっているため、安心して購入することができる。
Kindleは、中央集権的にコントロールされているDRMを用いた商品が、将来にわたって利用できることが、実際にある程度保証されている初めての例の1つだ。Wal-Martが音楽サービスを終了すると決めた際には、顧客は購入した楽曲をCDに移すか、今後聞けなくなるかのどちらかだと宣告された。MSNやYahoo!がDRMサーバを停止すると決めたときには、顧客は悲鳴を上げた。
上記3つのサービスは、すべて当初の方針を変えて(少なくとも今のところは)サーバを維持しているが、これらの例からもDRMを利用する商品が致命的な問題を抱えていることが見て取れる。これらのサービスとAmazonの違いは、Amazonが電子ブックを読む手段を選べるようにすることで市場を拡大しているのに対し、上記の他のサービスでは、アクセスをPCと一部のマイナーなハードウェアだけに限っていたことだ。
Amazonは繰り返し、同社が競争を恐れていないだけでなく、競争のあり方を変えることで、潜在的な競争相手を、パートナーでありかつAmazonの収入源である存在にしてしまう方法を見つけたことを示している。
この戦略の好例が、Amazonの出品サービスだ。Amazonの経営陣が、古本の再販売によって新刊書籍の売り上げが落ちる可能性があることを見て取ると、Amazonは古本マーケットをサービスに加えた。
それ自体も賢明な動きだったが、Amazonは古本の販売情報をウェブサイトの片隅に追いやってしまうのではなく、それぞれの書籍の品揃えのリストそのものに、古本の出品情報を組み込んだ。
このことは、利用者が購入する際に選択肢を与えてくれるだけでなく、選択肢があることをわかりやすく示すことで、利用者がAmazon以外の場所を調べる理由を減らしている。
現在では、Amazonで特定の本を調べると、そこでAmazon自体が売っている本も、他の小売店や個人が販売する新刊も、Kindleで読める電子書籍も、古本も1カ所でまとめて見ることができる。消費者から見れば、幅広い選択肢が用意されていることが明らかであり、Amazonが積極的に消費者の選択肢を広げようとしていることも明白だ。
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