ロサンゼルスで開催された2009年のElectronic Entertainment Expo(E3)において、ソニーとMicrosoftの両社は、ユーザーが自分のハードウェアにフルサイズのゲームをダウンロードできるサービスとデバイスを発表した。Microsoftが発表したのはオンラインマーケットプレースの新展開で、ユーザーが自分のシステムのハードディスクに小売版と同じゲームをダウンロードできる。一方ソニーは、同社の旗艦携帯ゲーム機を小型化した新製品「PSP go」を発表した。ゲームスロットが取り除かれ、16Gバイトの内蔵メモリにWi-Fi経由でゲームをダウンロードできることが強調された。
両社とも新作ゲーム購入の主軸として直接ダウンロードを推し進めており、直接ダウンロード技術が次世代ゲーム機での重要なセールスポイントの1つになると多くの人が予想している。また、転売したり友人と交換したりできる物理メディアが減少することから、この新たな収入モデルでは中古ゲーム販売業者が大幅に排除されるという副次効果もある。
だが、今一度よく考えてみよう。これは決して新しいものではない。実際、1980年代初頭からゲーム会社は、ゲームを直接ダウンロードしてゲーム機でプレイできるようにする試みを続けてきた。ここで、物理メディアを用いずにゲーム機を販売した過去の取り組みを簡単に振り返ってみよう。
Intellivisionは、同軸ケーブル回線からのゲームのダウンロードを実現した初の家庭用ゲーム機だった。加入者は、地域のケーブルテレビと接続する専用カートリッジをレンタルして1本のゲームをダウンロードし、次のタイトルをダウンロードするまでプレイすることができた。
しかしこのサービスは、MattelのIntellivisionゲームシステムが刷新され、システムで使用されるカートリッジのメモリ容量が増え始めたことによって、衰退していった。PlayCable専用カートリッジの容量は新しいゲームで必要な容量の4分の1しかなく、サービスを続けることができなくなった。
1980年代のゲーム機は、カートリッジ使用への道を切り開いていた。初期のゲーム機の多くは単なるアーケードタイトルの移植で、ハイスコアを出すために何度もプレイさせてコインを浪費させるゲームプレイの仕組みもそのままだった。唯一の問題は、ユーザーがゲームを購入してしまえば、パブリッシャーにとっては売り上げが途切れてしまうことだった。
そこで登場したのがGameLineだ。このサードパーティーゲームダウンロードサービスは、Control Video Corporation(後にAmerica Onlineとなる)が提供していたもので、いくつかのゲーム機で利用でき、ユーザーが専用カートリッジに接続された電話回線を通じて新作ゲームをダウンロードできるというものだった。プレイ回数には一定の上限があり、ユーザーはあらかじめ料金を支払う必要があった。
GameLineはゲームの流通に対する革新的なアプローチだったが、2つの大きな問題を抱えていた。1つは大手ゲームパブリッシャーを取りこめなかったことで、そのためにユーザーは小売店に並んでいないようなマイナータイトルに大金を投じていた。もう1つは、多くのハードウェアメーカーやソフトウェアパブリッシャーが倒産した1983年のアタリショックと同じ年に発売されたことだ。
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