Appleは同社の最高経営責任者(CEO)であるSteve Jobs氏がいなくなる6カ月間をどのように切り抜けるつもりなのだろう。そのことについては過去がヒントを与えてくれる。
その伝説的CEOが、考えられていたよりもはるかに深刻だと思われる健康問題で療養のために不在になる間、Appleが困難を強いられることは明らかである。しかし、Jobs氏が膵臓(すいぞう)がんの手術を受け、数カ月休養することを発表した2004年8月のときに比べると、2009年1月時点のAppleの状態ははるかに良い。
現在、Appleには強力な製品ラインが3つあり、世界規模の小売店のネットワークを持ち、銀行口座残高240億ドルという、深刻な不況を生き抜くための財務リソースを有している。2004年夏を振り返ってみると、Appleの状況は今とはまったく違うものだった。
当時、Appleはまさに財務基盤を固めつつあったところで、売り上げは対前年比30%増、6100万ドルの純利益を計上していた。これに対して、2008年第4会計四半期の純利益は11億4000万ドルに達している。
「Mac」の人気は回復しつつあったものの、本格的な復活はAppleがプロセッサのサプライヤーをIntelに替えた2006年になってからのことだった。その間、Jobs氏とAppleは水面下でプロセッサの移行に懸命に取り組んでいた。AppleはIntel製チップとの互換性がある「Mac OS X」の実験用バージョンを数年にわたり保持していたが、この移行プロジェクトではコードの大幅な見直しも行った。
「iPhone」の開発秘話を詳細に取り上げたWired.comの記事によると、iPhoneは当時コンセプト段階であり、ビジョンからハードウェアへと進化しようとしているところだった。その後Appleの最も重要なドル箱製品となったiPhoneだが、今われわれが知っている姿に似た製品となるのはそれから数年後、多くの設計変更を経た後のことだった。
「iPod」は一大飛躍を遂げる直前の状態にあった。この時期、「iPod nano」やビデオ対応iPodなどの画期的な製品が2005年の最終リリースを前に開発されていたのだ。
要は、Jobs氏が最初の療養休暇を取った2004年8月から、常勤の業務に復帰した同年10月までの間、これらの重要プロジェクトがすべて進行していたということだ。Appleはそれをすべてやり遂げたのである。
これと同じことが、Jobs氏が休養し、最高執行責任者(COO)であるTim Cook氏が指揮を執る今後5〜6カ月間に起こるかもしれない。現在Apple社内でどのようなプロジェクトが進行しているかについて正確なところは分からないが、過去にAppleはリーダーが不在であっても重要なプロジェクトを進行させる能力があるということを証明している。そして、それは2009年、再び証明が求められている能力となる。
Piper JaffrayのGene Munster氏は米国時間1月14日遅く、このことを次のように的確に表現した。「Steve Jobs氏のカリスマ的リーダーシップをほかの人物が完全に補完することはできないが、CEOとしてのJobs氏の中核的な属性は、経営面でも製品に関しても、再現することは可能だと思われる」
しかしそこには疑問がある。Appleは長期的にはどうするつもりか。
CNBCの14日の報道によると、最近になってテクノロジ業界の著名なエグゼクティブ2人が、Jobs氏の健康に「深刻な懸念」を表明したという。不本意だろうが、AppleはJobs氏の不在が予想より長くなる可能性を考慮せざるをえない。
Jobs氏不在が長期化することでもたらさられる可能性のある困難は、Appleにとって2009年最大の課題であり、これからの数カ月間にCook氏とAppleの取締役会が取り組まねばならないことである。だが、製品については心配ないだろう。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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