筆者は数年前から数多くのIKEA製品を買って組み立ててきた。整理だんす、オフィスのテーブル、ベッドサイドに置く机、メディア収納、ガラス製品のケース、などなど。
以前には、小遣い稼ぎのために忙しい友人に頼まれて書棚をいくつか組み立てたことさえある。
IKEA(おそらく読者はご存じだと思うが)は、家具小売業界で一大旋風を巻き起こしている。何百万人もの人々がIKEAの製品を買っている。その理由は、全般的に低価格で組み立てやすいからである。さらに、たいてい作業に必要なすべてのものが付属していることも人気の理由である。
筆者は必ずといっていいほどIKEAの製品を組み立てるたびに、各種のボルト、ねじ、六角レンチなどをより分けながら、IKEAではこれらの製品をどのようにデザインしているのだろうかという思いにとらわれる。
ジャーナリストであることの利点の1つは、こうした質問を尋ねる機会が得られる点である。そこで筆者はついにIKEAに電話をかけてその質問を投げかけてみた。読者も想像したかもしれないが、IKEAの製品開発者であるJune Deboehmler氏と広報担当者であるMarty Marston氏から話を聞いたところによると、その答えはかなり複雑である。
「われわれがある製品を作ろうと決めるときには、常にその価格から考え始める」とDeboehmler氏は言う。「それから消費者のニーズはどのようなものかを考える」(Deboehmler氏)
例えば、製品デザイナーは新しい薄型テレビ用の台をデザインしようと考え始めるかもしれない。多くの人々が薄型テレビを購入する傾向があるなど、こうした製品が必要とされていることを示す証拠があることを前提としてIKEAはデザインに着手することになる。
「開発プロセスを開始するときには、42インチの大型画面テレビが置けるキャビネットを開発することを前提として、Xドルで利益が出るように価格を設定する」とMarston氏は説明する。「そして、確固たる根拠もなく小売価格を500ドルにしようと決めた。それから、その価格で製品を実現するとしたら、何が作れるのか、何がデザインできるのかを考える」(Marston氏)
開発プロセスでは最初からさまざまな職種の人がかかわる。その中にはフィールドテクニシャンと呼ばれる人もいる。フィールドテクニシャンは新製品を開発する場合に何が必要かを考えたり、パーツを流用し、デザインのインスピレーションを得られるような、何か類似した製品をIKEAがすでにデザインしていないかを判断したりする人だ。
別の例としてはパッケージングテクニシャンという職種の人がいる。
「パッケージングテクニシャンは、製品デザインの最初の段階から常にチームの一員に加わっている」とDeboehmler氏は言う。「フラットパックで梱包して輸送時の無駄なスペースが最小限になるように、最も効率的にパッケージングするにはどうしたらいいかを常に考えなければならない」(Deboehmler氏)
Deboehmler氏とMarston氏は最近デザインされた139ドルの「Lillberg」チェアを例にとって説明してくれた。
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