最初のコンセプトの段階で、開発者は新製品の「概要」を主任デザイナーに伝える。
「われわれ開発者はデザイナーにコスト、外観、スタイルの種類など、その製品が達成するべきすべての点についてあらゆるパラメータを提供する。それから簡単な話し合いをして、デザイナーに時間を与えて別の場所でスケッチを作成してもらう。(中略)その後、腰を落ち着けて製品の土台となる実際の図面を描く」(Deboehmler氏)。
それ以降は、Deboehmler氏、主任デザイナー、パッケージングテクニシャン、フィールドテクニシャンがリトアニアにあるIKEAの工場に赴き、その工場の床で作業を開始する。
Lillbergチェアの場合は、工場でプロトタイプを作る構想だった。そしてチームは実際にプロトタイプを作り、次に完成したプロトタイプを検討した。
「われわれは何日もトライアルを繰り返し、最終的に最適な製品ができたと判断した」とDeboehmler氏は述べる。「デザイナーは四つんばいになりながら『よし、これで製品は完成だ』と言った。それから、その製品をスウェーデン(にあるIKEA本社)に持ち帰って再び分解を始め、そして改良の余地があると判断した。アームの角度を変えればパッケージにさらにぴったりと収まるのである」(Deboehmler氏)
デザイナーとパッケージングテクニシャンは、アームの角度を微調整することによって、1つの出荷用のコンテナにより多くのいすを詰め込むことができ、それによって消費者が負担するコストが安くなることがわかったとDeboehmler氏は説明する。
「アーム(の変更)は大きなコスト削減につながった」(Deboehmler氏)
この種の微調整はデザインの過程で最初の段階から少しずつ進展していくものであり、コンセプトの段階からかなり先に進んでみないと発見できないかもしれない。
「図面の段階で改良点を発見できれば、それに越したことはないように思える」とMarston氏は述べる。「しかし、実際には製品に触れてみて初めて『わかった、これをこのように曲げるとこの長さの木材から7個ではなくて10個のアームが取れる』とわかるのである」(Marston氏)。
Lillbergチェアの場合、コンセプトから製品完成まで、製造と世界各地への配送のための期間を含めて約10カ月かかった。
最新のIKEAのデザインではそれくらいの期間がかかるとDeboehmler氏は述べる。例外は照明器具である。照明器具の場合は新しい製品を販売するすべての国で点灯試験を実施する必要がある。
デザインの過程で考慮するべきもう1つの大きな点は、無駄を最小限にすることである。
「無駄を省くという考えが、われわれの文化に深く染みついている」とMarston氏は述べる。「それは製品開発だけではなく、(IKEAの)さまざまな機能分野にわたって浸透している。われわれは非常に無駄を嫌う。これはきわめてスカンジナビア的な思考様式なのである」(Marston氏)
「チームの何人かが工場に行くと、必ずどこか無駄になっている部分がないか確かめる。ときどき『ちょっと待てよ、これはこうすればいいのではないか』と気づくことがある。そして、すべてを徹底的に検討し直して改善する方法がないかどうか考える」(Deboehmler氏)
IKEAでは他社製品は一切販売していない。ほとんどすべての製品を社内でデザインしている。それではLillberg、Karlstad、Malm、Noresund、「Ljusdal」、「Tryggve」といった製品名にはどのような意味があるのだろうか。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
OMO戦略や小売DXの実現へ
顧客満足度を高めるデータ活用5つの打ち手
企業や自治体、教育機関で再び注目を集める
身近なメタバース活用を実現する
パナソニックのV2H蓄電システムで創る
エコなのに快適な未来の住宅環境