ちょうどいまから1年前の2006年12月12日、1つのネットサービスがひっそりと公開された。そのサービスは11カ月後、会員数が400万人を突破。2007年10月時点で1日の平均訪問者数は143万人、ユーザーの平均滞在時間は1日約1時間と、圧倒的な人気を誇る。
これはドワンゴと子会社のニワンゴが共同で運営している「ニコニコ動画」の現状だ。1日の動画再生回数は1567万回、コメント回数は320万件にものぼる。短期間でこれほどの人気を集めるサービスを開発する秘けつとは何なのか、ニコニコ動画の開発者たちに話を聞いた。
ニコニコ動画の特徴の1つとして挙げられるのが、開発スピードの速さだ。直近では、動画を視聴し終わると動画右のコメント一覧部分に、「この動画を見た人は、こんな動画も見ています」というリコメンド機能が12月5日に実装された。プレスリリースや開発者ブログなどで公開されたものもあるが、細かい機能追加、変更も常に行われている。
そもそも、2006年12月12日の時点では、YouTube、AmebaVisionの動画上にコメントを書き込む機能しかなかった。それがYouTubeからのアクセス拒否を受けて2007年3月には動画投稿サービス「SMILEVIDEO」を1週間で構築。5月にはモバイル版を公開(当初テスト版として公開し、8月に一般開放)、7月にはアフィリエイト広告「ニコニコ市場」、10月には台湾版を開始。11月にはユーザーが書き込んだコメントが動画の動きに影響を与える「ニコスクリプト」を実装するなど、急スピードでサービスを拡張している。
このスピード感がユーザーを惹きつけ、「ここに来れば常に面白いことがある」と思わせる一因になっている。
では、どのようにしてこの開発体制を実現しているのだろうか。
まず押さえておくべき点は、最初の「ニコニコ動画(仮)」の時点では「YouTube、AmebaVisionの動画上にコメントを書き込む機能しかなかった」という点だ。
実は当初、いろいろな機能を盛り込んだほうが面白いのではないかというアイデアは、開発陣の中でもあったのだという。
「単純にコメントが流れるだけじゃなく、もっといろんなエフェクトを付けたら面白いんじゃないかとか、絵が流れたら面白いんじゃないかとかいう話があったんですが、それらはあえて省いています。もっと高度なことをやれたんですが、機能はあえて厳選しました」とニコニコ動画の最初のプロトタイプを作成し、現在は企画運営に携わるドワンゴ ニコニコ事業部第一セクション セクションマネージャーの中野真氏は話す。
機能を複雑にしなかったのは、ユーザーが何をしていいか分からなくなって使うのをやめてしまう、という事態を避けるためだ。
「ユーザー側の行動の選択肢が増えると、『そのどれも選択しない』という選択肢まで増えてしまうんです。そうするとユーザーが逃げてしまうので、誰が見てもすぐに使い方が分かるように、できることをまず絞るということに注意しました」(ニコニコ動画の現在の基本システムを作ったドワンゴ 研究開発部 技術支援セクションの戀塚昭彦氏。なお現在戀塚氏はニコニコ動画の技術サポートを中心に手がけている)
これは同時に、「動画の上にユーザーがコメントを載せあう」という、ニコニコ動画ならではの機能をわかりやすく伝えることにもなった。
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