「グーグルは株式分割するのか」--可能性を探る

文:Elinor Mills (News.com)
翻訳校正:坂和敏(編集部)
2006年01月13日 15時54分

 米国時間5日に1株450ドルを超えたGoogleの株式は、一般投資家にとって、もはや確実な投資対象ではなく、Tiffanyで売られている高価なダイヤのような存在になっている。

 この問題に対処する確実な方法は、株式分割を実施し、1株あたりの価格を下げるというものだろう。しかし、金融分野の専門家らはその可能性を否定している。Google株に対する買い意欲が依然として旺盛なことから、同社幹部には株式分割を行う理由はほとんどなく、また彼らは哲学的な理由から分割に反対するかも知れない。

 ジョージタウン大学の助教授で金融学を教えるJames J. Angelは、「Googleの株式は、これだけの高値でも問題なく取引されている。その点では、『(Googleの幹部らは)何も悩む必要はない』と言えるだろう」とした上で、「株式分割など大した効果はないだろうから、行う必要はない」と付け加えた。

 しかし、株式を公開しているハイテク企業が、現在のGoogleの水準まで株価が値上がりしても株式分割を行わないというのは、特に大半の株式が100株単位で取引されるようになってからは、極めて異例なことといえる。過去にはYahooをはじめ、eBayやMicrosoftなど、無数のハイテク企業が株式分割を行ってきた。

 最近では、Google株を100株購入するのに4万5000ドル以上の資金が必要だが、株式分割が実施されればその額は下がる。大幅には下がらないが、若干は下がるだろう。仮に1対2の株式分割を行うとすると、既存の株主の保有株式数は2倍になるが、1株当たりの価格は半分になる。一方、新規の投資家は、分割前の価格の半値でGoogle株を取得できるようになる。

 株式分割を行っても、各株主が保有するGoogle株の価値や同株式の時価総額は変わらない。しかし、経営陣が株式分割を決断したということは、彼らが将来の株価について楽観視している証拠であると考える投資家が多いため、分割後の同社の株価が急騰する可能性が高い、と専門家らは見ている。

 しかしGoogleの経営陣は、少なくとも今のところは、分割に乗り気ではなさそうだ。2005年5月に開催された年次株主総会で、CEOのEric Schmidtは、株式分割の予定がないことを明言した。その後も同社は、方針変更の意向は示していない。同社の広報担当も、方針変更の可能性についてはコメントできないと語った。

 Googleの広報担当者は、「Googleをユーザーや顧客にとって、より有益なものにし、世界に通用する企業にすることが、われわれの第一の目標だ」と述べ、さらに「社の方針で、株価についてはコメントできない」と語った。

 Googleの幹部らは株式を公開する際に、異例のオークション形式のIPOに固執したが、これは個人投資家による株式取得を容易にするためだった。

 無論、シリコンバレーを拠点に急成長を続ける同社には、通例はほとんど通用しない。たとえば、同社の発行済み株式の35%は依然として同社の内部関係者が保有している。この35%という数字は、時価総額が1320億ドルに迫る企業としては、異例の高さだろう。また大手ハイテク企業の場合、発行済み株式の少なくとも半分を機関投資家が保有していることがよくあり、たとえばYahooでは発行済み株式の72%を機関投資家が保有している。それに対し、Google株の場合は機関投資家の保有割合はわずか38%にすぎない。

 たしかに金融関連の専門家らは、現在のような高値でもGoogleが今すぐに株式分割を実施しなければならない理由はないと指摘しているが、分割への圧力は向こう数カ月間に高まることはあっても低下することはない。米調査会社Piper Jaffrayのアナリスト、Safa Rashtchyは3日に、Google株の目標株価を引き上げ、今年中に600ドルに達するとの見方を示した。

 イリノイ州シャンペーンにあるイリノイ大学ビジネススクールで金融部門の責任者を務めるDavid Ikenberryは、「うまくリスク分散したポートフォリオの構築をめざす投資家にとって、現在のGoogleの株価はあまりに高すぎる」と指摘している。

 「株価が上昇すればするほど、さらに多くの投資家が株価に敏感になり始め、Google株に投資する人は減るだろう」とIkenberryは、述べ、さらに「つまりこれは、ごく普通の投資家がGoogle株を購入することは少なくなっていく、ということだ」と付け加えた。

 しかし、米大手投資銀行Bear Stearnsのアナリスト、Robert Peckは、Goolgeの共同創業者らが、金融界の伝説的人物である投資会社Berkshire HathawayのWarren Buffett会長を崇拝していることから、Googleが株式分割を行うには、同社の投資哲学の変更を要するだろう、と指摘する。Buffettは株式分割には批判的であり、現在、Berkshire Hathawayの株価は8万9690ドル前後で推移している。

 「われわれは当初から一貫して(Googleは)株式分割を行わないだろうと予想していた」とPeckは述べた上で、「しかしその一方で、株価を下げられれば、一般投資家にとって割安感が増すことから、それが『一般人の役に立つ』というGoogleの基本理念にも叶うことになるとの見解もある」と付け加えた。

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