Firefoxは宝の山

Paul Festa(CNET News.com)2004年11月29日 10時00分

  Firefoxは無償で使えるオープンソースのブラウザだ。しかし、その人気を当て込んで開発者がひと稼ぎできないということはない。

 それどころか、美術館からソフトウェア企業、果ては国防総省まで、さまざまな顧客にMozillaベースのアプリケーションを有償で提供する新しいビジネスが次々と出現している。

 「Mozilla関連のビジネスは、いまもの凄い勢いで伸びている」というのはPete Collins。Mozilla関連でアプリケーション開発の需要が立ち上がることを見越した同氏は、昨年Mozdev Groupを設立した。「Firefox人気に加え、景気が回復してきたせいもあって、対応仕切れないくらいの仕事がある。しかも、我々は宣伝などまったくしていない。顧客のほうから連絡をとってきて、仕事を依頼してくる」(Collins)

 Mozdev Groupは、最近採用した2人を含めてもまだ社員数7人の零細企業だ(これらの社員は世界各地に散らばっている)。Collinsは急増する需要に対応するため、来年1月にもさらに2人採用する予定でいる。また、仕事量に応じて75〜100ドルを請求している時間給も上がり続けている。

 Mozdev Groupをはじめとするこの種のビジネスの台頭は、オープンソースソフトに対するさまざまな企業からの関心を示す事象の一部に過ぎない。IBMなどのIT大手や、Red Hatのようなオープンソースビジネスの先駆けとなった企業では、長い間オープンソースモデルを採用してきており、関連サービスを有料で提供したり、オンラインからソースコードを無償で入手できるソフトウェアが利用するプラットフォームを売り込んでいる。

 マイクロソフトの社員のなかにも、オープンソースソフトウェアに魅力を感じ、この関連の企業に移った者もいる。

Mozillaベースのアプリケーション開発需要が高まっているのは、Mozilla Foundationが最近リリースしたFirefox 1.0 が高い評価を受け、ダウンロード件数も急激に伸びているからだ。Mozillaは、昨年AOL Time Warnerから非営利団体として独立した組織で、有志によるオープンソースソフトウェア--ウェブブラウザのFirefoxや電子メールソフトのThunderbirdなどの開発を管理している。

 Mozillaは6年間にわたって開発の遅れを繰り返し、Mozillaのコードをベースに開発されたNetscapeは悪評だったが、Firefoxの成功によって長期にわたるMozillaの不毛の時期は終わりを告げた。

 開発者によるMozillaの熱狂的な支持によって、Mozillaの技術をアプリケーション開発プラットフォームとして確立するというMozilla Foundationの当初の目標も、少なくとも一部は達成された。同グループの天敵ともいえるMicrosfotには、WindowsとInternet Explorerに対応したソフトウェアを開発するおびただしい数の独立系ソフトウェア開発企業がついており、これが同社の最も手強いアドバンテージとなっているが、Mozillaのプラットフォームを利用してアプリケーションを開発する者の数が増えれば、それだけこのアドバンテージに対抗できることになる。

 「Mozillaは拡張性の高いアーキテクチャを開発した。それさえできれば、あと必要なのはインストール実績だけだ。そのインストール数も増え続けている。それに、Mozillaはクロスプラットフォームなので、より広範な開発者を引きつける可能性がある」と、NPD GroupのアナリストRoss RubinはMozilla Foundationの仕事を評価している。

 Mozdev GroupはMozDev.orgというホスティングサービスから生まれた営利企業だ。MozDev.orgのサイトでは、Mozillaベースのアプリケーションを開発するプログラマーが開発用ツールを利用することができる。つまり、Mozdev Groupは、MozDev.orgの開発者らが無償で提供しているサービスをビジネスにしているともいえる。

 Mozdev Groupの顧客リストには、情報キオスクを発注したブルックリン美術館や、ソフトウェアツールスイートの開発を委託してきたLinspire、さらに国防総省などが名を連ねる(国防総省の発注内容については、秘密保持契約のため公開されていない)。

 独立系企業によるMozillaベースのアプリケーションの開発は、MPL(Mozilla Public License)により、以前に比べて容易になっている。さまざまな制約がある他のオープンソースライセンスと違い、MPLでは開発者が自らが開発したMozillaベースのアプリケーションを、オープンソースとして公開する必要がない。

 たとえばLinspireは、同社のLinspire Internet Suite用にMozdev Groupが開発したウェブベースの自動スペルチェッカーを、オープンソースコミュニティにするつもりだ。しかし、Linspireは有償で開発を依頼した他のツールについてはオープンソースとして公開しない選択をすることもできる。

 「MPLでは公開/非公開を選択できる。これは顧客にとって魅力のある条件だ。それでも、大半の顧客はコードをコミュニティに公開している。彼らはソリューションさえ手に入ればよいのであって、開発した独自システムを自社だけで独占するつもりなどない。それに、コードをオープンソースとして公開すれば、オープンソースの世界からのフィードバックによって品質が保証されるので、保守作業が軽減される。これは、顧客にとって利益になる」(Collins)

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