TiVoが放送中のテレビ番組をその場で巻き戻したり早送りできるようにする機能を投入してから5年が経過した今、ハッカーが同社のデジタルビデオレコーダ(DVR)の機能を一段と高めているが、このなかには同社にとって今後の行方を定める手がかりとなりそうなアイデアもある。
TiVoのハードウェアは、あらゆる面で機械マニアの格好のターゲットとなっており、強力な機能強化の手段と動機の両方を提供している。
TiVoに使われている部品の大半は既製のコンピュータ用のものであり、またこのマシンはLinux OSで動いているので、興味を持ったユーザーなら簡単に腕試しできる。さらに、TiVoでは潜在的な著作権侵害が懸念されることから、興味をそそる多くの機能が意図的に外されている。
この2つの要因が重なり、TiVoにとっては危険な、アンダーグラウンドの技術革新を競うゲームが加熱しており、ハリウッドや提携先のDirecTVをはじめとする放送局を怒らせたくない同社には、ライバルに先行するための新機能開発を行うにあたって慎重な対応が求められている。
現在オンラインには、TiVo用のさまざまなハッキングツールが出回っており、これらを利用すれば、ウェブインタフェースの追加、DVDや他のフォーマットへの番組の録画、ネイティブ機能の変更、内蔵ハードディスクの拡張、PCとのファイルのやりとり、番組のファイルサイズを圧縮してアーカイブ用に保存することなどが可能になる。
「MFS_FTP」と呼ばれる非公式の拡張機能は現在広く普及しているが、昨年これをリリースしたRiley Casselというプログラマーは、「TiVoはまたとない機会を逃しつつある。ネット経由でテレビ番組を観られない技術的な理由はない・・・もちろん、同じソフトウェアを使ってHBOやDiscoveryの高品位(HD)テレビ番組を放送できてしまう点は問題だ。そんなことになったら、ハリウッドがキレるだろう」と語っている。
ハイテク関連の知識を有するハードコアのTiVoユーザーにとっては、マシンのカスタマイズ以上に重要なことはない。保証が無効になる、ハリウッドの怒りをかう、あるいは感電死するといったリスクがあっても、彼らは箱をこじ開けて中身をハックしている。
TiVoでは、そうした不正改造に対して表向きは難色を示しているが、ただしその取り締まりに動いたことはこれまでほとんどなかった。また業界のベテランのなかには、Tivoがこうした不正改造から実は相当のおこぼれに預かっているという者もいる。彼らの考えでは、資金豊富なライバル各社の攻撃をかわすために、同社は不正改造の成果である機能を正式に追加しようとしているという。
「これはTiVoにとっても関連業界にとって素晴らしいことだと思う」というのはMark Cuban。同氏はかつてBroadcast.comを57億ドルでYahooに売却し、現在は高品位テレビ番組を放送するHDNetの社長を務めている。「いったんカスタマイズしたら、TiVoから乗り換えることはないだろう」(Cuban)
TiVoは、今後は自社の修理条件を厳しく適用し、これに違反したユーザーはサポートしないと述べている。しかし同社は、活発なハッカーコミュニティの扱いについて、実際には野放しの状態にあることも認めている。
「われわれは実際には何もしていない。大目に見ることも、奨励することもしていない」とTiVoのBob Poinatowski(サービス事業部製品マネジャー)はいう。「ハッカーコミュニティーの存在は認識しているが、どのような形でも関与はしていない」と語った。
また、別のTiVoの関係者は匿名を条件に、TiVoにコンテンツ企業からの苦情は来ていないことと、ハッキングがTiVoのビジネスに悪影響を与えない限りは同社がこれを問題視しないことを明らかにした。
TiVoは、ほかのデジタルビデオレコーダ製品との差別化を行うべく、新サービスの強化を進めてきた。同社は、Netflixと共同でダウンロード型のコンテンツ配信サービスの準備を進めており、また新しいインタラクティブ広告ツールも開発中である。
ハッカーにとって、先日発表された映画のオンデマンド配信に関するNetflixとの提携など、TiVoが未来に向けて思い描くビジョンは、ハッキングツールが既に実現しているものと変わらないように見える。
MFS_FTPの作者Casselは、「TiVoは、われわれが数年前から使っていたユーティリティを焼き直しているだけだ。Netflixの話には何の新鮮味もない」と述べている。同氏は、TiVoが対応できないことを引き受ける企業の設立を検討したこともあるという。
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