インターネットの出現で、人々が情報やアイデアをやり取りする方法は大きく変貌した。だが、もしもコンピュータネットワークが動きや光、熱、圧力を検知できるようになったら、世界はいったいどうなるだろうか。
環境を検知できるネットワークなら、森林火災を初期の段階で発見できるようになるかもしれない。また、戦場では敵軍の位置を監視したり、石油パイプラインの破壊を検知して、石油流出の惨事を避けることも可能になるかもしれない。
たくさんの大学やベンチャーキャピタル、新興のハイテク会社や大手企業らが、コンピュータネットワークに何百万もの微小な電子センサーを取り付ける実験的技術の研究に取り組んでいる。だが、この技術がブレイクするためには、技術面・コスト面でいくつかの難しい問題が解決されねばならない。
こうしたワイヤレス監視システムの中核となるのは、「スマートダスト」と呼ばれる特別な小型センサーだ。このセンサーは環境を観察し、情報を中央にあるコンピュータシステムにワイヤレスで送り返すようプログラムされている。サーモスタットのような標準的なセンサーと異なる点は、スマートダストが互いに連結し合ってインテリジェントなクラスタを形作り、共同でデータを処理・送信できるところだ。
「mote」(「塵」の意)と呼ばれる個々のデバイスには、プロセッサ1基と、わずかなコンピュータメモリ、そして低電力の無線トランシーバーがついている。また、このmoteに、それぞれのセンサー機器と電源が--みなボトルのキャップ程度のサイズに小型化されて--パッケージ化されている場合もある。
スマートダストは、今後数年間でアスピリン錠や米粒程度のサイズにまで小型化すると見られており、そうなれば水道に流して汚染物質を検知したり、道路のアスファルトに埋め込んで交通パターンを監視することも可能となるだろう。こうした小型デバイスが建物や橋、工場、広場に大量に散らばって、人間がかつてないほど細かいレベルで世界を見ることができるようになる世の中を想像してみてほしい。
「この革命的な技術は、人々の日常生活に膨大な影響を与えるものとなるにちがいない」と、Dust Networks(本社:カリフォルニア州バークレー)の事業開発担当バイスプレジデントRob Conantは述べている。
新生市場の動向を追跡しているHarbor Researchによると、2010年までには、こうしたデバイスがインターネットや他のネットワークで何十億個も使用されるようになるという。ワイヤレスセンサーネットワーク関連の機器・サービス市場は、その頃までに、10億ドル以上の規模に成長する、と同社は予測している。
Dust Networksは、このビジョンの現実に取り組んでいる企業だ。スマートダストという名称は同社の創業者がつくったものだ。ワイヤレスセンサーネットワーク市場には他にも、Crossbow Technology(カリフォルニア州サンノゼ)、Ember(マサチューセッツ州ボストン)、Millennial Net(マサチューセッツ州ケンブリッジ)など、複数の企業が参入している。
IntelやAccenture、それにカリフォルニア大学ロサンゼルス校やカーネギーメロン大学、マサチューセッツ工科大学、カリフォルニア大学バークレー校などトップレベルの大学も、この分野で活発な動きを見せている。
米国政府もこの技術に関心を示しており、米国防総省の国防高等研究事業局(DARPA)と米国科学財団(NSF)、それに米中央情報局(CIA)が、こうした計画にそれぞれ助成金を提供している。
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