欧州のセキュリティソフトウェアメーカー各社は、Microsoftが自分たちの縄張りに入り込もうとするのを注意深く、そして静かに見守っている。
F-Secure、Panda Software、Sophosといった企業は、米国の同業者とは異なり、控え目なアプローチをとっている。Symantec(本社カリフォルニア州クパチーノ)などはMicrosoftを声高に批判しており、幹部を欧州にまで送り込み、Microsoftが「Windows Vista」によりセキュリティ競合他社を駆逐しようとしているとの懸念を、報道記者らに伝えている。
だからといって欧州の企業が、SymantecやMcAfeeなどが表明している懸念を感じていないというわけではない。
「Microsoftの参入は脅威と見なすべきである」とPanda Software(本社スペイン・ビルバオ)の企業開発ディレクターを務めるJosu Franco氏は述べている。「Microsoftは同社のデスクトップOS事業での独占的地位をアンチウイルス分野でも利用しようとしている。これは濫用と言えるだろう」(Franco氏)
Windows XPの後継版であるVistaの出荷を間近に控えたMicrosoftにとって、欧州は重要な戦場である。Vistaは2007年1月に一般向けに発売される予定である。欧州委員会はすでにMicrosoftに対し、市場での独占的立場の濫用を禁じる規則に遵守するよう警告している。MicrosoftはVistaで何が許容されるかを模索し続けているところだ。
欧州にはアンチウイルスやその他のセキュリティ製品を販売する小規模の企業が多数存在する。これらの企業のなかには、自分たちがNetscape Communicationsと同様の運命を辿ることを恐れる者もいる。ブラウザを提供していたNetscapeは、MicrosoftがWindowsに「Internet Explorer(IE)」を搭載した後に消滅した。
「どの会社も心配している。当然のことだろう」とForrester Researchのアナリスト(デンマーク在勤)のThomas Raschke氏は言う。「セキュリティ市場、とくにアンチウイルスやファイアウォールといった最も成熟した分野は急速に統合を進めている。多くの企業が勢力に加わるか、さもなければ消滅するという選択を迫られている」(Raschke氏)
セキュリティソフトウェアとウェブブラウザは明らかに異なるものの、Microsoftの意図は同じであり、セキュリティにも同様のリスクがあると、Franco氏は述べる。
「デスクトップの90%以上にIEが搭載されている状況が、イノベーションや、利用者に与えられる選択肢、そして特にセキュリティという観点において、消費者に貢献したとは誰も言わないと思う。このブラウザのモノカルチャー化が好ましくなかったことは周知のことだ」(Franco氏)
しかしMicrosoftは、自社だけでWindowsを保護することはできないため、他のセキュリティ企業の役割が重要だと主張している。
Microsoftの事業開発マネージャーを務めるAdrien Robinson氏は「Microsoftでは、この問題を自社だけで解決できるとは思っていない。この取り組みに関しては業界のサポートが必要だ」と言う。「われわれが提携先との協力関係を充実させるほど、顧客は大きなメリットを享受できるようになる」(Robinson氏)
セキュリティソフトウェアとその機能は、Vistaに対する多くの懸念のなかでも最も注目される問題として浮上している。Vistaではセキュリティ技術が強化されて登場する予定であるためだ。Microsoftは、消費者向け新製品である「Windows Live OneCare」によりセキュリティ分野への進出をねらうと同時に、「Forefront」のブランド名の下で、企業向けセキュリティ製品への取り組みもすすめている。
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