Microsoftは「Windows Vista」のデスクトップ仮想化について、仮想マシン内で使用できるエディションを比較的高価な「Windows Vista Business」と「Windows Vista Ultimate」のフルバージョンに限定している。この制約について、業界側は数カ月前から解除を求めていた。
ゆえに、Microsoftが同社の仮想化をめぐる方針を変更し、より安価な2つのVista Homeエディションも使用可能にするとの意向を記者やアナリストに伝え始めたことは、驚くべきニュースではなかった。だが、Microsoftは前述の方針を一転させ、米国時間6月19日の電子メールによる簡潔な声明で現行の制約を継続すると表明し、ジャーナリスト、ブロガー、アナリストを一様に驚かせることになった。
Microsoftはその電子メールの中で「当社はWindowsの仮想化に関する方針を再評価した結果、2006年秋に発表した最初の方針を維持することに決定した」と述べている。同社の関係者は、この件の詳細や、こうした判断に至った理由などに関してコメントを避けた。
かつてはコンピュータマニアの領分だった仮想化技術だが、今では一般の領域にも入り込みつつある。仮想化とは、複数のOSを同時に1台のコンピュータで稼動させる技術で、特に「Mac OS」と並行してWindows向けプログラムを使用したいと考えるMacユーザーにとって重要なものとなっている。
Microsoftは当初から、最新世代の仮想化技術にはセキュリティのリスクがついて回ると主張してきた。確かに、2006年8月初めに開催されたセキュリティカンファレンス「Black Hat」でも、1人の研究者があるプログラムを披露し、仮想化技術を用いれば、「rootkit」と同じように、悪意のあるコードをユーザーの知らないうちに稼働させることが可能なことを示している。ただし、制約解除の計画に関する議論の中で、Microsoftは依然としてセキュリティに懸念があるとしながらも、こうしたリスクを引き受けるかどうかの判断は、ユーザーに任せた方がいいと発言していた。
だが、アナリストたちは、セキュリティ問題とライセンスの制約の関連性を疑問視している。セキュリティのリスクがあるというなら、すべてのVistaのエディションに問題が発生するはずだ。また、LinuxであれWindows XPであれ、仮想マシン内で稼動するOSが主要バージョンで、適切にライセンスを受けていたとしても、仮想マシン上で他のOSを動作させている限り、同じようなリスクが存在しうる。
市場調査会社Directions on Microsoftのアナリスト、Paul DeGroot氏によると、ほとんどの人が読むことのないライセンス契約は、セキュリティポリシーを掲載する箇所としては適していないという。「もし自社の製品をより安全にしたいなら、実際にそうなるように対策を取るべきだ」と同氏は述べている。
現在、仮想マシン上で動作する「ゲストOS」として使ってもライセンス契約上問題がないのは、Vista BusinessとVista Ultimateのフルバージョンだけだ。両ソフトウェアの価格は、前者が299ドル、後者が399ドルとなっている。
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