大きな利益を挙げると、経営トップの評判も驚くほど上がることがある。
2005年、Hewlett-Packard(HP)の最高経営責任者(CEO)Carly Fiorina氏が取締役会で突然解任されたとき、多くの業界アナリストやHP社員たちは、2002年に大きな議論となったCompaq買収に対する取締役会の意志表明であると考えていた。当時、HPはさまざまなビジネス部門の整理統合を必死に進めていたが、社内が混乱し、Fiorina氏が想定していたように人員を整理できずにいた。ウォール街では、そうした危機的状況を救うため会社の分割を求める声さえ上がっていた。
しかし、HPの取締役会は、Fiorina氏が選択したCompaq買収という戦略は正しかった、とかたくなに主張し続けた。Fiorina氏が解任されたのは、その戦略の遂行がうまくいっていなかったからであり、CompaqのPCおよびサーバ市場での大きなシェアとHPの上位サーバおよびプリンタを組み合わせてHPを世界的なハードウェア企業にするという考え方自体には賛成していた、と取締役たちは言明していた。
それから1年以上が過ぎ、新CEOのMark Hurd氏による積極的な経費削減戦略を経て、HPは今、再びウォール街の注目を集めている。何かのビジネスから撤退したわけでもなければ、戦略を大幅に変更したわけでもないのにだ。HPの社員や株主たちにとっては喜びに値することだろう。しかし、業界としては、次のような耳の痛い問いかけも必要ではないだろうか。すなわち、「Fiorina氏はCEOとしては最適な人物でなかったとしても、同氏のとった戦略は正しかったのではないか」という問いかけである。
HPはCompaqを買収したとき、8〜10%の営業利益を維持し、複数の分野で業界トップのマーケットシェアを確保し、両社が単独では決して実現できない合併のスケールメリットによってコスト削減を達成することを目標として掲げた。2006年、現時点で、HPはこれらの目標に極めて近い数字を達成している。
Compaq買収以来、最も業績の良かった前四半期には、営業利益6.9%を達成した。PCではDell、サービス分野ではIBMの後塵を拝しているものの、プリンタと低価格帯のサーバでは市場トップのシェアを確保している。会計年度の最初の9ヶ月間で45億ドルの純利益を挙げたHPは、2006年だけで、過去2年間の合計を上回る利益を達成しそうである。
HPの関係者はこの件についてコメントを拒否している。
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