では、HPの現在の成功の要因は何なのだろうか。Hurd氏が行った1万5000人のレイオフによって人件費が削減されたことは明らかだ。HPの第3四半期の売上高は2005年同期と比較して5%しか伸びていないが、純利益は2005年第3四半期の1億ドルから2006年同期の14億ドルへと急増している。
CompaqのPCと低価格帯のサーバという製品ラインアップがなければ、現在のHPがどうなっていたか想像するのは難しいと、一部のアナリストは指摘する。HPのプリンタ部門は大部分の利益の中核をなしており、最新四半期の同社の利益14億ドルのうち8億8400万ドルを占めている。しかし、IntelやAdvanced Micro Devices製のx86チップを搭載した安い下位機種のサーバに消費者が移行しているため、上位機種のサーバの伸びは停滞している。この傾向は長期にわたって続いており、長年、上位機種のサーバに特化してきたSunでさえ低価格サーバ市場に参入しているほどだ。
また、HPは、Compaq買収前に比べて交渉面でも力をつけている。2001年当時、HPと旧Compaqは、その主要サプライヤーであるMicrosoftとIntelの言いなりだった、とIlluminataのアナリストJonathan Eunice氏は語る。MicrosoftとIntelは、新技術を導入する際、HPとCompaqを張り合わせて、自社に有利な契約を結んでいた。
両社が合併してからは、従来の主要サプライヤーとの関係を大きく損なうことなく、Advanced Micro Devicesのような代替サプライヤーとも契約の交渉ができる規模になったという。そこまでの形に持っていくのは大変だったが、「なりふり構わずというのが必要なときもある」とEunice氏は指摘する。「HPは現在の同社の規模によってもたらされる力を効果的に利用している」(Eunice氏)
Compaqの買収に対する反論としてよく聞かれたのは、HPは上位機種市場を広くカバーするIBMと下位機種で敏捷なコスト構造を実現しているDellの両社にはさまれて、「押しつぶされる」ことになるのではないかというものだった。「IBMがいかに復活を遂げたか、Dellのやり方がいかに成功をおさめていたかを忘れないようにすることは重要だ」とEunice 氏は言う。
IBMは依然として恐るべき競争相手である。資金の潤沢な最も儲かる法人客を捕まえている上に、他社を圧倒する豊富なソフトウェアとサービスを備えており、Powerプロセッサ搭載システムで上位サーバ市場でも安定した地位を築いているからだ。2005年に人員を大幅に削減すると、Hurd氏はこうした優良法人市場に目を向け、Peregrine SystemsやMercury Interactiveといった企業を自社のソフトウェア部門に吸収した。
PCおよびサーバ市場では、HPはさらなる成功を収めている。2004年にAMDのOpteronチップを大量に採用する決断を下したことで、市場シェア争いでもトップの座を維持しており、Dellとの差別化も果たした。Dellは2006年になってようやく、各方面からの圧力に押されてAMD製のチップの採用を決めたところだ。HPの低価格帯サーバの売上高はこの四半期で6%伸びたが、Dellの伸びは1%に留まっている。
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