スマートフォンネイティブが見ている世界

子どもを追いつめる「LINEいじめ」--“ネットいじめ”の今

 10月27日、文部科学省により平成26年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」における、「いじめ」に関する調査結果が発表された。

 岩手県矢巾町の男子生徒がいじめを苦に自殺する事件が起きたが、生徒がいじめにあっているとアンケートに記入していたのに学校が認めなかったことを問題視。いじめの認知件数の再提出を求めたのだ。その結果、最初の提出時よりもいじめは何と3万件も増加した。今回のいじめでも8割以上は解決済みというが、逆にいえばまだ2割弱のいじめが解決されていないことになる。

 一方、同調査ではスマートフォンやインターネットによるいじめの件数は7898件で890件減っているが、ネットいじめは本当に減ったのだろうか。ネットいじめの現状と保護者ができる対処法について見ていこう。


文部科学省の平成26年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」における「いじめ」に関する調査等結果より。再提出によりいじめは3万件も増加した

「学校裏サイト」の次の段階へ

 これまでのネットいじめは、匿名掲示板に書かれたり、メールなどでやりとりされることが多かった。メールなら差出人が分かることが多い。また、送信元のメールアドレスを架空のものや他人のメールアドレスに変えて送る「なりすましメール」なども、受信者側で受信拒否設定ができるようになっている。

 一方、匿名掲示板によるいじめは、匿名で書き込まれる上、被害が拡大しやすかった。一時期流行った「学校裏サイト」だ。学校裏サイトとは、学校の公式サイト以外の特定の学校の話題を扱う非公式サイト全般を指す。つまり、匿名掲示板における学校のスレッドなども学校裏サイトに当たることになる。やりとりされる話題はさまざまで、先生や特定の生徒の噂話なども含まれていた。

 学校裏サイトがいじめの温床になっていると問題になったため、対策はすでにされていた。文部科学省の調査によると、平成22年12月時点で約70%の都道府県・指定都市、約10%の市町村が何らかの形で学校ネットパトロールを実施している。50%以上の都道府県・指定都市が民間企業やNPOに委託して実施しており、約70%の市町村では、教育委員会の職員が定期的に実施している状態だ。

 最盛期には多くの学校に学校裏サイトができており、文部科学省調査によると、その数は少なくとも全国で3万8000件以上に上っていた。その頃の様子は学校裏サイトを検索・閲覧できるようにしたサービス「学校裏サイトチェッカー」で垣間見ることができる。


学校裏サイトチェッカー

 学校裏サイトは、検索すれば誰でも見ることができたため、ある意味対処が簡単だった。それによって市町村や学校側もいじめを把握でき、リアルないじめ解消に向けて動くことができたからだ。ところが、今のネットいじめは外部から見えないところで起きる傾向にある。

今の流行は「LINEいじめ」

 学校に訪れると、必ず先生たちの口に上るのが「LINEいじめ」だ。LINEでいじめが起きているだけでなく、LINEグループでのコミュニケーションがうまくいかずにトラブルに発展している例も多い。

 たとえば、LINEで特定の子だけをグループから外したり、特定の子だけ除いたグループを作ってその子の悪口を言い合ったり、特定の子の書き込みだけ無視するなどのいじめが行われている。そのほか、その子が嫌がるような写真や動画をクラスのグループなどで共有するいじめも起きている。

 LINEいじめがこれまでのネットいじめと異なるのは、GoogleやYahoo!などの検索サービスの検索対象とはならない点。友だちになったり、グループに招待されたりしなければやりとりされている内容が読めない点だろう。つまり、外部からはいじめがあることが分かりづらい仕組みなのだ。

 その上、やりとりは端末から削除してしまうと証拠が残らない。あるいじめっ子は、いじめている相手に学校にスマホを持ってこさせ、目の前でトーク履歴を削除させたそうだ。「やりとりなんかしていないし、いじめもしていないよね」としれっと嘘ぶいていたという。証拠を消せばいじめを言い逃れられると考えたのだろう。

 さらに、ネットいじめの特徴として、いつも持ち歩いているスマホで行われるため、いつでもどこでも24時間いじめられ続ける。その上、保存・コピー・拡散などが容易であり、いじめが拡大しやすいという特徴がある。そのため、ネットいじめ、特にLINEいじめは子どもを追いつめる傾向にあり、注意が必要なのだ。

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