しかしその反面で、外部のサービスプロバイダーとのコラボレーションは一筋縄ではいかないようだ。「“世界初”となるとうちの社長は『絶対にやろう』と言うが、ネットワーク負荷の問題やコスト面で難しい場合もあり、スタッフとしては苦労する」(河野氏)など、現場の立場からの現実的な事情も吐露された。
一方、「機能を増やす際の課題の1つがライセンス費。すでにかなりの負担になっているので、機能を組み合わせて1つのライセンスに集約できればコスト面からもありがたい」(竹之内氏)、「コスト面や業界バランスなどが取れた提案がベスト」(河野氏)という、有効なコラボレーションを期待する声も聞かれ、各社は共通して、消費者需要や投資コスト、利益還元率などのビジネスバランスが洗練されたサービスとのコラボレーションを求めていることを強調した。
また、参加者からは「アプリコンテンツを提供する場合に、アプリの仕様が3キャリア共通でないために苦労する」と、プラットフォームの共通化への要望が寄せられた。これに対し各社は、「戦略的に統一化するものもあるが、基本的にはモバイルの世界に閉じずに、インターネットのデファクトスタンダードになるものを入れていく。より対応コンテンツの作り手が多いものが望ましい」(山口氏)、「3社がすべてを揃えるということはないが、足並みを揃えてやるものもあると思う。業界をリードした企業に合わせるものや、同時に3社やるものもある。モバイルFeliCaはドコモに合わせたし、QRコードは3社が揃って取り組んだ」(竹之内氏)、「社会的インフラになるものは他社と一緒にやっていく。特定者のためではなく、社会にあまねく利益が還元できるものだ」(河野氏)と、方針を明らかにした。
また、日本での販売展開が注目を集める、Appleの携帯電話「iPhone」についても質問がなされた。ドコモの山口氏は「ガジェットとしては非常に面白い。ユーザーインターフェース(UI)をウリにしている会社ならではの端末だと思う。キャリアが考えるとあの形にはならない。ただ、画像をメールに添付したり、コンテンツをウェブにアップロードできないとなるとドコモの端末としてはスペックダウンになってしまう。インターフェースの優れたPDAに電話機能をつけるだけでは、ARPUが上がらないのでキャリアがやるには厳しい」と話す。
また、ソフトバンクモバイルの河野氏は「ケータイがフリーズしていきなり動かなくなるというのがはたして認められるだろうか。欧米人と日本人ではケータイの使い方がまったく異なる。欧米人は仕事の延長線上で使うケータイを使うことが多いのに対し、日本人は空いている時間に趣味で使う場合がほとんどだ。個人的には、インターネット上の動画が見放題の端末は嬉しいが、キャリアとして考えるとネットワーク負荷が大きい」という、日本市場の実状に則した見解を示した。
一方、KDDIの竹之内氏は「iPodというブランドに機能としてケータイを加えたと揶揄する声もあるが、個人的にはあれでいいと思う。というのも、『iPodを使うことがかっこいい』という理由でiPodを選んで買っている人にとっては、機能うんぬんよりもiPhoneであればいいからだ。ライフスタイルが多様化している中で、端末に機能を平均的に入れるのは無理がある。『この端末にはこのコンテンツ』というふうにそれぞれに差別化してくほうがいいというのが個人的な考えだ」と、ブランド戦略を積極的に展開するキャリアとしての立場で共感を示した。
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