インドの最新EC動向--外資系企業はBtoCが一切禁止

 マイクロアドの子会社であるマイクロアドインディアは9月4日、インドに進出する日系企業を対象に「イーコマースとデジタルマーケティング」と題したセミナーを開催。同社の代表である佐々木誠氏が登壇し、インドのEコマース市場の現状や企業による活用方法について解説した。

2強「Flipkart」と「Amazon」の比較

  • 「Flipkart」

 冒頭で、報道されたデータを元に、インドのEコマース事業者のトップ2にあたる「Flipkart」と「Amazon」の比較が行われた。まず売上目標について、Flipkartはこれから1年間で40億ドル、Amazonは2014年度に10億ドルを目指すとしており、月間訪問者数でみてもFlipkartが大きくAmazonを突き放している状況である。

 出店者数は、Flipkartはこれから1年間で5万に増やすとし、Amazonはこれまでに8500の事業者が出店している。国内に置く倉庫の数は、Flipkartは現在6箇所で今後3年間で50箇所に増やすとし、Amazonは今後数カ月で7~10箇所に増やすとしている。注力する商品カテゴリは、Flipkartはファッションとライフスタイルで、Amazonは電気製品と書籍だ。

  • 「Amazon」

 他社とのエクスクルーシブ(他社排除的)なパートナーシップについては、Flipkartは5カ月間でMotorolaの製品を100万個販売しており、直近ではXiaomiの携帯電話を販売している。一方のAmazonはサムスンの携帯電話とSwipeのタブレット端末を販売している。今後も双方のこうした提携は増えていくものと考えられる。

 事業拡大のための他社買収については、Flipkartはアパレル専門Eコマースサイトのミントラを買収し、今後もウェアラブルデバイスやファッションテクノロジ、モバイルインターネット、ロボットなどの分野で模索している。このほか、Flipkartが10億ドルの資金調達の計画を発表した直後に、Amazonが20億ドルを増資する方針を発表するなど熾烈な争いが繰り広げられている。

外資規制で「マーケットプレイス」が主流

 企業がEコマースを展開する際には2つの方法がある。1つは商品の購買者と直接取引する一般的な「Eコマースサイト」を自社で開設する方法。もう1つは自社だけでなくさまざまな商品を扱うサイトを通じて、間接的に購買者と取引する「マーケットプレイス」を利用する方法だ。後者は日本でいうところの楽天市場への出品に相当する。

 しかし、インドにおいては日系に限らず外資系企業によるEコマースに関する規制が存在する。外資系企業は、インドではBtoBのEコマースのみ行うことができ、BtoCのEコマースが法律で一切禁止されている。つまり卸売りしかできない。そのため、外資系Eコマース会社としては後者の「マーケットプレイス」を利用してローカル企業にプラットフォームを提供し、ローカル企業から購買者に直接販売してもらう方法しかない。

 一方、外資系メーカーとしては一般的なEコマースサイトを自社で開設する方法を利用できない。最近では、こうした外資系企業の不満に着目したローカルベンダーが、企業に対して共同でEコマースサイトを開発・運営することを持ちかける動きも見られるという。先日来日したモディ首相の新政権によって、製造業者に対するEコマースの規制が緩和される可能性はあるが、その場合にどういう条件が課せられるのか、あるいは課されないのか、既存の小売規制との関係をどう整理するのかなどはまだ不透明だという。

 以上を踏まえると、企業がEコマースを活用する方法は3つ。1つは自社サイトにマーケットプレイスへのリンクを貼る、もしくはベンダーと提携してEコマースサイトを構築し「売り場」として活用する方法。2つめは、マーケットプレイスやトラッキングツールを利用することで「購買データ」を取得し活用する方法。3つめは、マーケットプレイスを広告媒体として活用し「広告出稿」する方法である。

 ただし、いずれの方法でも外資系メーカーが行うのはあくまでローカルベンダーに対するBtoB、または外資系Eコマース企業による単なるプラットフォームの提供であることが前提だ。

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