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デジタルキャンパス行脚(1) - 武蔵工業大学横浜キャンパス

2004/09/09 10:00
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 普段からSFCの話題を取り上げているが、他のデジタルキャンパスではどうなっているのか。今回は武蔵工業大学横浜キャンパスにお邪魔し、小池星多先生と小池ゼミのみなさんにお話を伺った。

武蔵工業大学横浜キャンパス

 武蔵工業大学では7年前の1997年に横浜キャンパスを開設した。横浜市営地下鉄の中川駅から緑道をたどっていくとキャンパスに到着する。のんびりと歩いても駅から5分くらいの距離で、SFCの遠さ比べるとうらやましい限りである。キャンパスの入り口は開かれていてキャンパスの広場全体が門から見渡せる、開放感ある作りになっている。このキャンパスに環境情報学部があり、環境情報学科と情報メディア学科が設置されている。

 僕がキャンパス内でノートパソコンを開くと、無線LANの電波をキャッチすることができた。無線LANは7年前から部分的に設置され、5年前から本格的に運用され始めたのだそうだ。環境はSFCと似ている武蔵工大だが、日々のコミュニケーションスタイルはSFCと状況が全く違うようだ。学生の一人に話を聞いてみた。

 「カリキュラムの関係もあってキャンパスにもよく足を運ぶし、学校に行けば、話す必要がある人にはだいたい会って話をすることができますね。ノートパソコンを持ってくる率が低いこともありますが、無線LANはそんなに使われてないです。キャンパスの中でも研究室だったりカフェだったり、居場所はだいたい決まっているからネットコミュニケーションにはそんなに頼らないのが現状。もちろんメッセンジャーも使っているけれど、キャンパス内での連絡には必要ないんじゃないかと思います」

 大学の事務室からの連絡伝達についても興味深い話を聞くことができた。キャンパス開設当初から、学校側からの情報の連絡や学生・サークルが告知に利用できるポータルサイトが用意されていたが、実際はあまり使われておらず、キャンパスの広場の中にある電光掲示や紙の掲示板の方が、キャンパス内の情報流通の点でも効果的に働いているという。また別の学生に話を聞いた。

 「キャンパスが広くなく、人数も少ないので、大学の学部2年を終了する頃には大半の学生と顔見知りになっている。そうなると人と話して情報をやりとりすることが非常に多い。学校からの情報のニュースソースはポータルサイトではなく友人であり、その友人とは通りがかりに掲示板を覗いた人、と言うことになる。掲示板が学校の中心にある広場に設置してあると、広場を囲うにキャンパスが建てられているので、人だかりができているとすぐに分かる。人だかりのでき方次第で、重要な情報が出されたかがどうか一目で分かり、それを目撃したら友人から情報が得るようにすればいい。そういった横浜キャンパス特有の学生の情報生態系がある」

 キャンパスをデザインするとき、そういった直接のコミュニケーションをベースにした情報生態系を意識して作られていたかは分からないが、情報を人伝いに伝達していくシステムができ上がっている点はとても興味深い。SFCの学生の場合はメッセンジャーやBlogを介してそういった情報が回るが、横浜キャンパスの学生は当たり前のように毎日キャンパスで会って情報をやりとりし合っている。直接のコミュニケーションの方が盛んになるキャンパスデザインである一方で、せっかくの無線LANインフラやキャンパス内のコンピュータネットワークが生かされてないと見ることができる。

小池ゼミのみなさん

 小池ゼミの学生の1人は「これまでの横浜キャンパスのポータルサイトには情報の重要性や新鮮さなどが分からないという点で、人だかりが見えたり人伝にリアクションが伝わったりする紙の掲示板の情報より劣っている。情報が生きているかのような感覚を持たせるものが作れないだろうか?」と、海賊版としてポータルサイトをリデザインしようと企んでいるそうだ。

 その話を聞いたときに、Blogとソーシャルネットワーキングの関係をイメージしてしまったが、それよりももっとリアルな行動に直結したあたりが、このキャンパスにはちょうど良いバランスなのかもしれない。

 同じような設備を持っていても、SFCではネットに頼る形でのコミュニケーションが、横浜キャンパスではリアル寄りのコミュニケーションが、それぞれちょうど良いポイントになっているのだ。デジタルキャンパスに限らず、キャンパスの空気感だとか文化というものは昔からあったとはいえ、使い方や接し方に差がある点で比較的わかりやすいのではないかと思った。

小池星多先生

 さて、ポータルサイトをリデザインしようという学生の話に触れたが、今回お話を伺った武蔵工業大学環境情報学部の小池星多助教授が率いる小池デザイン研究室では、情報デザインをテーマにして、様々なモノをリデザインしてきている。例えば横浜市営地下鉄のセンター南駅のバス路線図、横浜市都筑区役所の地下駐車場の場内サインなどをリデザインした。いずれもデザインの社会性、使う人のためのデザイン、ユーザー参加型で作るデザインに注目し、デザインを人間の活動から捉え直す実践を行っている。

 「デジタル化、ヴァーチャル化で自由さを手に入れている一方で、情報をデザインするときに、何を可視化するかという点を意識するのは重要だ。これまで道具は状況の中にあって価値を見いだしているという考え方に立つと、今度は使われている状況で物を作っていくべきではないか」と小池先生は語る。その価値が可視化されたものがデザインだという。

 小池先生やゼミ生からの口からは1回も出てこなかったが、インタラクションからデザインを起こすのが小池ゼミの手法のようだ。ゼミ生のみなさんにそれを問うてみたところ「インタラクションだと特別意識したことはないけれど、言われてみればそうなのかも」と口を揃えるように返ってきたから面白かった。キャンパスライフや小池ゼミでの研究から、より人の活動に接近した情報デザインを行う文化がしっかり根付いているように思えた。

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