以前に本欄でも紹介していたGoogleのラジオ広告配信サービス「Audio Ads」が米国でベータテストを開始したが、この直前(米国時間12月5日)にZDNet.comの「Digital Micro-Markets」ブログで関連するエントリーが上がっていたので紹介したい。
「Google Audio Ads EXCLUSIVE: Radio station owner ‘Real Deal’ interview」というこのエントリーのなかで、書き手のDonna Bogatinは、Jack Taddeoというラジオ業界関係者にインタビューを行った結果を紹介している。Taddeoは、米中西部でラジオ局を運営するほか、コンサルティングの仕事も手がけている人物だという。
まず、Audio Adsの元になったdMarc Broadcasting(Googleが2006年1月に買収)の提供する「ターゲットを絞った、計測可能なラジオ広告("targeted, measurable advertising")」の仕組みについて、「これは現実的なゴールか?」と尋ねたBogatinに対し、Taddeoは「十分な数の市場--実際には、特定の市場にあるすべてのラジオ局にこの仕組みを持ち込めれば(現実的なゴールになる)」とし、その理由について「自分が広告主--たとえばP&Gだったとして、オハイオ州シンシナチという市場に向けて、歯磨き粉『Crest』の広告を打ちたいとする。その場合、ターゲットとする聴取者にもっとも効果的に広告を届けられるラジオ局から広告枠を買う必要がある。だとすると、12-17歳や65歳以上の聴取者を相手にするラジオ局では効果が期待できないかもしれない。Googleのこのサービスに参加するラジオ局からいくら安く広告が買えるとしても、結局その金は無駄になってしまうので、この場合価格の安さは意味を持たない」と説明している。
さらに、Taddeoは「自分が特定の市場でもっともレートの高いラジオ局のオーナーだったら、(Googleのサービスを使って)広告枠の安売りをしたいとは思わない。そうではなく、P&Gや同社の広告代理店に対して、製品のターゲットにマッチした『適切な』ラジオ局で広告費を使うほうがもっと理にかなっていることを示すだろう」と述べた後、「ラジオは広告に支えられたメディアだ。・・・タダで広告(枠)をあげていたら商売は成り立たない。また、セールスエージェントがわれわれの保有する在庫の価値を下げることは認められない」と付け加えている。
次に、ラジオ局に対するGoogleの売り込み--「dMarcのRevenueSuiteを利用すれば、どんな(広告)在庫も有料広告で(しかも自動的に!)埋めることができる」という点について、Bogatinが「これはあまりにうますぎる話で本当とは思えない」とした上で、「このサービスはラジオ局と広告主の双方にメリットをもたらすのか?」と尋ねると、Taddeoは「ラジオ局にとっては、基本的にうまい話ではない。ただし、1ドルで売れるものを二束三文で処分してでも広告在庫を減らしたいというなら話は別だが」と答え、「(Googleのサービスを利用すれば)広告単価のレートが約95%下がる」ほか、「自局の番組が安っぽいコマーシャルでうめられてしまえば、わずかな収入と引き替えに『リスニング環境(the listening environement)』を低下させることになる」ため、ラジオ局側としてはどちらも絶対に認められないとしている。ただし、「場合によっては、それでもいくらか収入があったほうが(まったくないよりも)いいこともある。また、広告主にとっては、ターゲットの絞り込みを気にしない限り、Googleのシステムでも構わないだろう」とTaddeoは言う。
さらに、Googleによるラジオ広告市場参入がもたらす業界への長期的な影響について、Taddeoは「2つに分けて考える必要がある。1つは小規模な市場で、そこではラジオ局側が本来なら平均10ドル稼げる広告枠を1ドルででも販売して売上を得たいと考えることがあるかもしれない。いっぽう、主要な大規模市場ではラジオ局側がたとえ在庫の売れ残りがあったとしても、そんな低単価では広告枠を売りたくないと考えるだろう。これは主にイメージの絡む問題で、たとえばToyota(のような企業)がシカゴのラジオ局WGNから通常300ドルの広告枠を50ドルで買うことができるとすれば、わざわざGoogleを通すこともないはずだ」と述べている。
最後に、Taddeoは「Google(の仕組み)が本領を発揮するのは、既存の広告商品とラジオ広告との組み合わせからシナジーを得られるようになってからのことで、そのためにGoogleは現在営業チームをつくっている」とした上で、それでも「自分が数多くのラジオ局を保有するCBSやClear Channelのような立場だったとしたら、Googleに対して余分な利益を落とすようなことはしない」とし、「わずかな額の収入しか期待できないため、自分の経営するラジオ局ではGoogle Audio Adsをまだ試していない」と答えている。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力