上場来初の赤字転落でどうなる楽天

 楽天は11月16日、2006年12月期の第3四半期(2006年7〜9月)における連結決算を発表した。

 売上高は477億9200万円(前年同期比5.7%増)、営業損益は16億3800万円(前年同期は125億4000万円の黒字)、経常損益は21億9800万円(同130億4200万円の黒字)となり、最終損益は158億2300万円(同60億1300万円の黒字)の赤字転落となった。四半期ベースでの赤字転落は、2000年の株式上場以来初めてのことだ。

 初の経常赤字転落となったのは、信販子会社となる楽天KCの営業損益が82億円の赤字と、第2四半期(2006年4〜6月期)の4億円に比べて赤字幅が大幅に拡大したことによる。

 これは、消費者金融会社への利息制限法の上限を超えた金利(過払い分)の返還請求発生に伴う貸倒引当金計上の厳格化によるもので、楽天KC固有の要因ではなく、いわば消費者金融業界全体のネガティブ要因と捉えることができる。さらに、自動車ローン事業の売却などで189億円の特別損失が発生したこともあり、大幅な最終赤字を強いられた。

 そのほかの部門別の営業利益の状況を見ると、主力部門のEC(電子商取引)事業の営業利益は34億5500万円(前年同期比27.5%増、前四半期比6.4%減)、証券事業22億3600億円(同30.4%減、同6.4%減)、ポータル・メディア事業6100万円の赤字など、期初の会社側期待の水準には及ばない低調なものとなった。ただ、トラベル事業の営業利益は13億3200万円(前年同期比50.2%増、前四半期比34.7%増)と非常に好調な推移をみせている。

 決算発表の席上、三木谷浩史社長は今回の赤字計上について「事業拡大に伴う一時的な反動」との見解を示して、今後の回復へ期待感を示した。

 準大手証券のアナリストは「確かに今回の赤字は特殊要因によるものが重なったと言える。ただ、本業のEC事業での利益面での伸び悩み傾向や、これまで、利益面で大きな支えとなってきた証券事業が株式相場低迷(特に新興市場)により、大幅な減益を強いられている。年内に急速な収益回復が想定しにくいことから、2006年12月期通期での経常黒字への復帰にはかなりの努力が必要となりそうだ。また、TBSとの提携交渉でも進展がみられないことも引き続き懸念材料」としている。

 一方、メリルリンチ日本証券は11月16日付でリリースした楽天についてのレポートで、「金融系事業の業績不透明感と一部のマスコミによる醜聞報道などで割安に放置されている同社株価であるが、こうした悪材料は出尽くしたと考えられ、この第3四半期決算発表が株価の転換点になる可能性が高い」として「買い」の投資判断を継続している。

 楽天の株価は2006年の大発会(1月4日)で11万9000円の年初来高値をつけて以降、3月から4月に一時期戻り歩調となった以外はほぼ一貫して下降トレンドを辿った。10月12日には年初株価水準の3分の1以下の3万6900万円まで売り込まれる場面もあった。その後はやや戻したものの、先週末17日終値は4万5300円となっている。

 今回の第3四半期決算発表では、事前に赤字転落が予想されていたこともあって、株価面での反応は小幅安に止まった。今後の株価推移について準大手証券の投資情報部では「10月下旬の反発局面でも25日移動平均線が戻りの限界となったことから、よほどの好材料が飛び出さない限り短期間に5万円の水準を大きく超えることは難しそうだ。来年の年明け以降、2006年12月期の連結決算と2007年12月期業績見通しの輪郭が明らかになるまでは、4万〜5万5000万円程度のレンジでのボックス相場となりそうだ」としている。

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