2005年5月にサービスを開始した同社は、設備投資に3000億ウォン以上、コンテンツ確保に700億ウォン以上など、莫大な投資を行ってきた。しかし加入者は10月下旬時点で126万人。これは2006年新年から開始された地上波DMBの720万人(10月下旬時点、加入者ではなく対応機器の普及台数)を大きく下回る数だ。これにより「2007年上半期までしても、累積赤字が2355億ウォンに達している」(TU Media)という。
こうなってしまったのには、さまざまな理由があるが、地上波DMBは無料視聴が可能であるのに対し、衛星DMBを見るには加入費2万ウォンと、月定額1万1000ウォン(TU Basic料金)の視聴料を支払わなければならないこと、また前者は地上波テレビ番組をリアルタイム放送できるのに対し、後者はできないなどによるところが大きい。リアルタイム放送ができないのは、テレビ局などが運営社となり、衛星DMBと競合関係にある地上波DMB陣営がこれを渋るからだ。
2007年下半期に入ってついにTU Mediaの株主でもあるMBCが、同社の番組を地上波DMBにリアルタイム放送する契約を行い、韓国放送委員会からの承認を受けるために申請書を提出。大きな望みをかけたが、結局は地上波DMB陣営から反対を受け、実施は保留ということになった。
これでは生存自体があやうくなると判断した同社では、韓国放送委員会や国会などの関係機関に対し、政策建議文を送付。地上波テレビ番組のリアルタイム放送を承認することのほかに、DMB事業の支援策用意、規制緩和など7項目を訴えた。
地上波DMBと衛星DMB、似たようなサービスが市場に混在していれば、ユーザーはやはり安くてメリットが多い方へ流れるのではないだろうか。“いまさら”感があるとはいえ「そもそもなぜ似たようなサービスを同じ市場に導入してしまったのか」という議論は、DMB全体に関する問題として語られることが多い。またDMBは上記だけでなく、収益モデル確立など解決すべき問題がいくつか残っている。こうした問題を解決しなければ、放送と通信の融合が進む今後、TU MediaはもとよりDMB界全体が厳しくその在り方を問われることとなりそうだ。
韓国のインターネット普及率は75.5%(韓国インターネット振興院「2007年上半期 情報化実態調査」による)、携帯電話加入者数は4114万人(情報通信部資料より。統計庁によると韓国の全人口は約4800万人)だ。飽和状態にある通信市場を活性化するための起爆剤として期待されていたIPTVとDMBだが、それを実施する企業において今、泣き笑いが分かれている状態だ。それは「ぜひ利用したい」という人をつかむだけの、ビジネスモデルが確立されているかどうかの差であるようにも見える。
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