テレコム市場の統一を進めるEU、独立監視機関を設置へ

 テレコム分野での統一市場実現を目指す欧州連合(EU)が、根本的な改革案を打ち出した。これが実現すれば、EU全体の規制当局が設立され、旧国営系通信事業者はネットワーク事業とサービス事業の切り離しを要求される可能性がある。法案を承認した欧州委員会(EC)では、「消費者は安価にサービスを利用できるようになる」と説明している。だが、当然ながら強い反対意見が出ている。

 これは、ECが2007年11月に発表したもので、「Telecoms Reform Package」と呼ばれる。固定と無線の両方を対象とした包括的なものだ。同年夏に施行された携帯電話の国際ローミング規制に次いだテレコム市場統一化の動きとなる。

 中でもフォーカスがあたっているのはブロードバンドだ。EU全体のブロードバンド普及率は18.8%。北欧などの一部の国では世界最高水準だが、東欧などでは1桁のところもある。EU全体として見ると日本や米国に遅れをとっており、ブロードバンドサービスが利用できない地域もまだ10%程度あるという。現在のブロードバンド市場はほとんどの国で旧国営テレコムが独占しているが、サービスを切り離すことにより、新規参入を促し競争を奨励、消費者には価格が下がり、選択肢が増えるとしている。

 新しい改革案では、EU27カ国全体を監督する規制当局European Telecom Market Authority(ETMA)を立ち上げ、これが監視にあたる。もちろん、通信の自由化は各国レベルで進められている。だが、各国の規制当局は、旧国営テレコムとの関係が強い。そこで独立機関として運営されるETMAが、通信事業者に対しネットワークとサービスの分割命令を下すなどの権限を持つ。米国の連邦通信委員会(FCC)にあたるものとなる。

 これに対し、France Telecom、Deutsch Telecomなどは強い反対を示している。反対理由は、これまで自分たちが行ってきた投資が有効に活用されなくため。結果として新しいサービスの出足が遅れる、としている。また、EUの権限が大きくなることに対する懸念もある。ネットワークとサービスの分割はすでに英BTで実現しており、ECは効果がでていると評価している。

 このほか法案では、域内で統一の緊急通報用電話番号として「112」の施行も強制する。112は少し前にEU統一の緊急通報番号となったが、実装していない国もあり、効果が問われていた。また、域内であれば国外からのフリーダイヤルの利用も可能となる。さらには、固定・無線のナンバーポータビリティにも及んでおり、ユーザーが申請してから24時間で処理が完了するよう義務づける。

 この法案は、EC情報社会・メディア担当委員のViviane Reding氏が手がけるものとなる。Reding氏は2007年、オペレータや業界団体の反対を押しのけて携帯電話の国際ローミングを強行した実績を持つことから、見事な交渉手腕を使って今回の法案も規制化にこぎつけるだろうと見られている。

 今後、欧州議会、閣僚理事会の承認を得る必要があり、順調にいけば2010年に規制化される見通しだ。

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