未来へのヒントがみつかる次世代デジタル戦略

真実の愛を試すブラジャー「TRUE LOVE TESTER」--制作秘話を聞く

 スマートフォンを中心に、オムニチャネルやIoTなどの次世代テクノロジを通じて生み出されるデジタルマーケティング戦略。そこにはアイデアやクリエイティビティが不可欠だが、それだけでは「これまでになかった体験」を提供することはできない。ユーザーに新たなエクスペリエンスを届けるために、欠かせない普遍性や本質とは何か。

 この連載では、デジタルを活用したコミュニケーション施策を発信する「コードアワード」に寄せられた作品から、デジタルマーケティングの「未来」を拓く“ヒント”をお届けする。

「TRUE LOVE TESTER」
「TRUE LOVE TESTER」

 前回の「ヤフートレンドコースター」に続き、2回目となるカケザンのクリエーティブプランナー・新野文健氏による受賞作品インタビュー。今回は「コードアワード2015」のベスト・イフェクティブ賞「TRUE LOVE TESTER」の制作秘話を聞いた。

 TRUE LOVE TESTERは、20~30代の女性に人気のランジェリーブランド「Ravijour」の10周年記念キャンペーンとして、2014年1月に制作された、真実の愛を検知するホックを搭載した”ウェアラブルブラジャー”。ブラに内蔵されたセンサが女性の心拍信号を読み取って、Bluetooth経由で専用アプリに飛ばしデータを解析。心拍の変化率と時間からTRUE LOVE RATEが一定値を超えるとホックが外れる仕組みだ。

 TRUE LOVE TESTERの企画・プランニングを担当したTEAM PIRATESのクリエイティブディレクター 中島寛文氏と杉山元規氏、プロデューサーのkichi 髙橋聡氏、そしてデバイス開発を担当したライゾマティクスのテクニカルディレクター 清水啓太郎氏と鴨井世友氏に、プロジェクトの成り立ちからテクノロジについて聞いた。

クライアントと制作という垣根を超えた複合チーム

――最初に、チームの成り立ちについて聞きたいのですが、TRUE LOVE TESTERは会社の垣根を超えたクリエイターが集まったプロジェクトになっています。どのような経緯で、このチームが編成されたのでしょうか。

「Ravijour」のウェブサイト
「Ravijour」のウェブサイト

中島氏:まず、今回のクライアントのベリグリさんから、ランジェリーブランド「Ravijour」が10周年を迎えるにあたって何か面白いことをやりたい、というお話をいただきました。それが3年前で、当時はまだウェアラブルの波がきはじめたくらいの頃です。何度もプレゼンをした中で、このTRUE LOVE TESTERの企画に達中社長にも共感していただき、プロジェクトがスタートしました。

 この企画を実現するにあたって、まずプロデューサーの(kichiの)髙橋さんに相談をして、テクノロジの部分は(ライゾマティクスの)清水さんを中心にチームをアサインしていきました。

kichiのプロデューサー 髙橋聡氏
kichiのプロデューサー 髙橋聡氏

清水氏:ライゾマからは僕と鴨井と、斎藤(斎藤精一氏)が入りました。さらに、TASKOの木村さん、林さん、あとはフリーでエンジニアをしている堀尾貫太さんなど、エンジニアリングのスペシャリストを巻き込んだチームを作って動き出しました。

――チーム編成は最初から決まっていたのでしょうか。それとも企画の進行に合わせてメンバーが増えていったのでしょうか。

清水氏:どちらかというと後者ですね。チームを編成する上で、必要な人を徐々にアサインしていくという進み方で編成されていきました。

ライゾマティクスのテクニカルディレクター・清水啓太郎氏
ライゾマティクスのテクニカルディレクター 清水啓太郎氏

杉山氏:「今までにないブラジャーを作ろう」ということで皆が集まってくれました。複合チームは珍しいことではないのですが、このチームはその中でも、ギュッと結束力が高い感じはありますね。まさにブラジャーの力です(笑)。

中島氏:男性的なテクノロジ思考に寄りすぎて、女性から「こんなデザインのものは身に付けられない」と言われるようなものにはしたくなかったので、チームの中に女性も入ってもらいました。まず、RavijourのPRマネージャーがそうですし、プロダクトデザインチームにもいます。

 デザイン面でも、Ravijourのプロダクトデザインチームにディレクションしてもらうことで、最先端テクノロジを組み込みながらも、下着としてのファッション性や女性が好むプロダクトデザイン、そしてブラジャー本来の機能である快適なつけ心地にもこだわって制作しました。

杉山氏:今回のプロジェクトは、クライアントが非常に協力的だったので、一緒になって作りました。クライアントと制作側に分かれた関係ではなく、クライアントもチームの一員としてやるという意味で、本当に複合チームのようでしたね。

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