2012年にはクラウドコンピューティングや、Intelのモバイル戦略、ウルトラブック、Appleの企業戦略が注目を集めることになるはずだ。
本記事は筆者にとって、2012年の幕開けを飾るものである。2012年を展望すると、クラウドコンピューティングが即戦力となる選択肢の中核となり、Research In Motion(RIM)が抜本的な改革に直面し、Intelがモバイル市場で躍進を果たし、Appleが企業向け市場に本格参入し、多くの小売業者によって何年も前から使用されてきた技術があらゆる業界に浸透していくことになるだろう。
以下は、筆者による2012年の展望である。
- 企業がSaaSを選択することは、当たり前のようになっていく。このため、多くの企業はWorkdayやSalesforce.com、NetSuiteといった企業が提供するクラウドの導入を決断する分け目の年を迎えるはずだ。大手企業は既にこういった変化を敏感に感じ取っている。OracleによるRightNow Technologiesの買収や、SAPによるSuccessFactorsの買収は、当たり前の動きであるというわけだ。
- さまざまなAPIが企業に変革をもたらす。企業システムとクラウドアプリケーションの連携が密になっていき、両者の間を取り持つAPIによってあらゆる物事が変貌を遂げていくはずだ。こういった変化は既に、さまざまなところで始まっている。2012年にはそれが加速していくことになるだろう。
- RIMは、そのハードウェアビジネスや知的財産の一部売却、および経営体制の大幅な見直しを行うことで、ソフトウェア・サービス企業に変貌していく。ただ、それでも同社の苦しい状況は続くだろう。
- あらゆる企業は、小売業者の様相を呈してくる。小売業界には素晴らしい特徴があり、筆者も長年に渡ってさまざまな切り口からそれを採り上げてきている。その肝は、蓄積したデータに基づいて顧客の行動をできる限り正確に予測するという点にある。つまり、この業界ではあらゆるものごとが分析の対象となるわけだ。2012年には、他の多くの業界も同様のアプローチを採るようになるだろう。新世界の秩序は、さまざまな業界が入り乱れるなかで行われる分析や取引といったものによって形成されていくはずだ。
- MicrosoftとNokiaの関係が何らかのかたちで結実する。Nokiaはいずれ米国で地歩を固めるだろうが、Windows Phone市場におけるシェアは伸び悩みを見せるだろう。一方、MicrosoftはWindows Phoneの信頼性を企業に対してアピールし、RIMとそのパートナー企業の地位を脅かすことになるだろう。
- ウルトラブックが人気を博すことになる。今後2〜3週間は、Consumer Electronics Show(CES)の開催も相まって、ウルトラブックの話題で持ちきりとなるはずだ。ウルトラブックは500〜600ドルの価格帯で発売され、大衆向けノートPCとしての地位を確立するようになるだろう。
- Appleが企業向け市場に本格参入する。同社はこれまで、コンシューマライゼーションを通じて企業市場への参入を果たしてきた。しかし、最高経営責任者(CEO)であるTim Cook氏は、よりビジネス寄りの戦略を打ち出してくる可能性がある。筆者が話をした最高情報責任者(CIO)たちは、管理しやすく安全性にも優れているiOSに対して好意的な目を向けていた。こういった傾向は今後も続くだろうが、(IBMで働いていたこともある)Cook氏の実績を考えた場合、企業市場により深く入り込むための戦略が打ち出されてくるはずだ。なぜかって?この市場からは、大きな収益が期待できるためだ。