西尾淳 (WINDY Co.)
2008/05/12 17:17
コンパクトデジタルカメラが一般ユーザーに行き渡って久しい。一時は“デジカメの成長は終わった”などとも言われたが、さに非ず。手ブレ補正や顔認識などの新しいデバイスによって、コンパクトデジタルカメラは再び発展を始めた。カメラは便利で楽しいものであることを止めようとはしない。
それまで一直線に伸びていた国内のコンパクトデジタルカメラ出荷台数は、2003年あたりから伸びが鈍化。一般ユーザーにデジカメが行き渡り、後は買い替え需要になるだろうと予想された。これはほぼすべての携帯電話にカメラ機能が搭載され、実用上十分な機能を備えたころと時期が重なる。しかしデジタルカメラはそれ以降、手ブレ補正や大型液晶モニター、顔認識機能などの搭載により、再び出荷台数は上昇に転じている。今後どうなるかはわからないが、少なくとも開発者は、より簡単に、よりきれいに、より楽しく撮影できるための開発を怠ることはないだろうし、それが続く限りカメラは魅力的な商品であり続けるはずだ。
デジタルカメラ出荷実績(国内)
コンパクトデジカメの状況を見てみると、中心は薄型でスタイリッシュなモデル群。それでも1000万画素や光学式手ブレ補正は当たり前のように搭載している。カラーバリエーションも増えた。実際に使っても不具合があるわけでもなく、普通に撮影できる。デザイン優先で選んでかまわないだろう。
レンズ一体式の高性能モデル、いわゆる「ハイエンドコンパクト」と呼ばれるモデルはずいぶん減ってしまった。これは上級指向のユーザーは一眼レフへ移行しているため。富士フイルムの「FinePix S100FS」のように、例外的に高性能なレンズ一体式モデルもあるが、基本的にコンパクトデジカメは一眼レフとは異なる方向を目指している。小型軽量による高いポータビリティをベースに、新しい技術を追求しているのだ。
10倍ズームを搭載しているのが不思議なほど小型。パナソニック「DMC-TZ5」
このところ増えているのは高倍率ズームレンズを搭載したコンパクトモデル。パナソニックの「DMC-TZ5」がその代表だが、10倍ズームを搭載しているのが不思議なほど小型に収まっている。リコーの「Caprio R8」も7.1倍の高倍率ズームを搭載する。このタイプは最強の旅行カメラでもある。持ち運んで邪魔にならず、広い風景から遠くのものまで撮影できる。このタイプは今後も増えるはずだ。
どれほど目立たないが、広角化も進んでいる。一般的なコンパクトタイプは焦点距離35mm(35mm判換算)程度から始まるのが普通だったが、このところ28mm相当からのものが増えてきた。富士フイルム「F100fd」、ニコン「S600」、ソニー「W170」、カシオ「EX-Z100」などがそれで、パナソニックの「DMC-FX500」に至っては25mm相当という広角撮影を可能にした。撮ってみればわかるが、広角はとても楽しい。被写体に思い切って寄ることができる。コンパクトに広角が増えてきたのはとてもいいことだと思う。
水中10m防水、2.0m耐衝撃、100kgf耐荷重構造。水中でも自在に撮影できる。オリンパス「μ1030SW」
注目したいのは防水カメラ。オリンパスのμ(ミュー)シリーズが生活防水で登場したが、現在は水中でも撮影できる「μ1030SW」「μ850SW」などが中心だ。これらは水中で撮れるというだけでなく、頑丈にできているのが特長だ。アウトドア派にはぜひお勧めしたい。
その他では、無線LAN(ニコン S52cなど)や、YouTubeに最適化した動画撮影機能(カシオ)など、ユニークなモデルも登場している。
操作性の面ではタッチパネルが見直されつつある。従来のタッチパネルというと、ボタンやダイヤル操作を置き換えたものが多かった。反応が遅れたり、微妙な操作ができないといった問題が起りやすく、評価は高くなかった。しかし新しいタッチパネル操作は考え方を変えている。たとえばソニー「DSC-T300」は指で触れたところにピントを合わせたり、複数の顔を認識した場合は、タッチした人を中心に撮影するといった機能を搭載した。パナソニックの「DMC-FX500」はタッチした被写体を自動で追尾したり、再生時にドラッグで拡大するといった操作を可能にした。今後の展開が楽しみだ。
被写体が「子ども」か「大人」かを自動で判別し、どちらかの笑顔を優先して撮影できる、ソニーの大人/子ども認識機能機能面では、顔認識機構が絶好調で進化している。初期には人物の顔を認識し、ピントや露出を合わせるというだけのものだったが、笑顔を認識してシャッターの切れる機構や(各社)、大人/子ども認識(ソニー)、顔登録(カシオ)などに発展してきた。大人/子ども認識はピントが合いづらい子供の顔を優先したり、顔登録では複数の人物の中から、自分の子供に優先してピントを合わせることが可能になる。
顔認識といっても、“100%認識するわけではないし、意味がない”と思うかもしれない。私も最初はそう思っていた。しかしこれが楽しいのだ。カメラの前で笑顔を作ってもシャッターが下りず、“そうか、自分の顔は笑顔に見えにくいのか”と冷静に自分を振り返ってみたり、大人/子供認識では、大人なのに子供と判断されたり、それはそれで楽しいもの。宴会に持って行けば盛り上がること間違いない。
顔認識機能は、ものすごく大きな可能性も持っている。瞬き検出は目を閉じていないか判断するが、学校などの集合写真を撮るプロカメラマンにとっては夢のような機能だろう。何10人もいると目を閉じていないか判断するのは至難の業だ。顔登録にズームも組み合わせれば、運動会で走る自分の子供に自動でズームアップするなんてことも可能になるかもしれない。
これらは撮像素子に写った画像から判断しているわけだが、発展すれば人物だけでなく、トータルでのシーン判断が可能になる。風景やマクロ、動物などの動く被写体など、シーンに合わせて自動でモードを切り替えるシステムも徐々に増えている。パナソニックの「おまかせAi」や、ソニーの「iSCN」などがそれ。なにもしないで最適な設定になるわけだから、コンパクトカメラの理想の姿かもしれない。
単焦点レンズによる高い描写力が魅力の、リコー「GR DIGITAL II」コンパクトデジタルカメラの均一化の流れに逆らって、個性的なモデルもいくつか登場している。
フィルムカメラでは「高級コンパクト」というジャンルが存在した。高性能なレンズとチタンなどの高級な素材を使用し、場合によっては一眼レフよりもきれいに撮影できるというものだ。これをデジタルで再現したのがリコーの「GRデジタルII」。単焦点レンズによる高い描写力が特長だ。“単焦点はちょっと……”というなら、ほぼ同じデザインの「GX100」もある。シグマの「DP1」は高級というよりも、本格を狙ったカメラ。一眼レフに使われいるものとほぼ同じ撮像素子を使用し、圧倒的な解像力を誇る。GRデジタルともに、ファームウェアで機能や使い勝手の向上を行ない、長く使うことを考慮しているのもいい。
秒60コマの連写性能で、ベストショットを取り逃さない。カシオ「EX-F1」
カシオの「EX-F1」は、まったく新しいジャンルのカメラだ。秒60コマの連写性能、秒1200フレームのハイスピードムービーを可能にした。これは一眼レフでも不可能な撮影能力で、カメラの可能性の一端が見える最新技術。こういったカメラが登場するのはすばらしいことだと思う。
一眼レフがコンパクトに勝るのは、結局のところ表現能力とヒット率でしかない。例えば絞りを開ければボケが強くなり、独特の写真になる。動くものを撮影する際は、一眼レフのレスポンスが必要になることもあるだろう。絵のきれいさなどは、条件がそろえばコンパクトでも一眼レフに負けないものが撮影できなくもない。それ以外、可搬性、最新技術など、すべてコンパクトのほうが上だ。カメラのおもしろさは、コンパクトが先頭に立って切り開いている。
一眼レフ派もコンパクト派も必見
コンパクトデジタルカメラ、一眼レフカメラともに新製品が出そろった2008年春。コンパクトデジタルカメラは、顔認識の発展、極薄、防水機能など個性ある機能が多彩だ。一眼レフでは、エントリー機が一斉に新しくなった。手ブレ補正もほぼ装備が完了し、流行はライブビューや階調補正へ移行している。多彩な製品の中から、機能を見極めてお気に入りの1台を見つけよう。
2008年春は、プロ向けの高価なモデルを除き、ほとんどのデジタル一眼レフが一気に刷新されるというシーズンとなった。これだけそろって新しくなるのはちょっと珍しい。新製品がひととおり出そろったところで今年の一眼レフカメラを総括してみよう。
どのカメラもレベルが上がり、買って失敗したと思うようなものはなくなった。そういった意味では安心できるのだが、各カメラにはキャラクターがあるからおもしろいのだ。自分の指向に合ったものを選べる一眼レフカメラを紹介する。
コンパクトデジタルカメラが一般ユーザーに行き渡って久しい。一時は“デジカメの成長は終わった”などとも言われたが、さに非ず。手ブレ補正や顔認識などの新しいデバイスによって、コンパクトデジタルカメラは再び発展を始めた。カメラは便利で楽しいものであることを止めようとはしない。
トータルバランスのよさか、薄さと軽さをとるか。はたまた、絵づくりの上手さか顔認識や水中撮影などの機能をとるか。コンパクトデジタルカメラは非常に種類が多い。メーカー別に特徴的な機種を見ていこう。



