「Apple TV」にとってのデジタルコンテンツは、プリンタにとってのインクカートリッジのようなものになるのだろうか?
アナリストたちは、Apple TVが2007年末までに100万台出荷されると予測している。しかし、Apple TVのハードウェアや製造にかかる原価を計算すると、Appleが本体の売り上げよりも、楽曲やビデオのダウンロード販売で利益を得ることを考えているように思われる。Apple TVは3月に発売された。
Apple TVの部品や製造にかかる原価を調べた市場調査会社iSuppliは、同デバイス1台あたりの製造費用は237ドルだと試算している。Appleに数字を確認しようとしたが、本稿執筆時点では回答を得られていない。
iSuppliのシニアアナリストAndrew Rassweiler氏は、「ハードウェア的な観点から見て、本当に採算がとれるのだろうか?Appleは、本体ではなくインクジェットのインクカートリッジで利益を確保するプリンタのビジネスモデルと同じようなビジネスモデルを考えているのだろうか?」と述べる。
プリンタメーカーの多くは、プリンタ本体の利幅を非常に小さく、もしくはゼロに抑えている。しかも、プリンタの購入頻度は、定期的に交換の必要に迫られ、確実に何度も売れるインクカートリッジの購入回数をはるかに下回る。Appleにとっては、iTunesの曲、テレビ番組、映画のダウンロードが、プリンタメーカーのインクに当たる。もっとも、楽曲は(インクカートリッジのように)交換するものではないが、アーティストやスタジオは定期的に新しいコンテンツを制作するものだ。
iSuppliが今週公表した237ドルという数字は、個々の部品とその価格を調査したうえで、Appleが受けているであろうボリュームディスカウントも考慮してはじき出されている。最も高価な部品はIntel製マイクロプロセッサの「Pentium M/1GHz」。90ナノメートルプロセス技術を用いて製造された同プロセッサを、iSuppliは1個あたり40ドルと試算している。最新の技術が用いられているわけではないCPUをあえて採用し、AppleはApple TVのコストを抑制している。
Apple TVの小売価格は299ドル。237ドルという数字はこれよりまだ62ドル少ないが、同デバイスは、「Mac Mini」やIntel Core Duoプロセッサを搭載する17インチの「iMac」などのほかのApple製品より利ざやが低い。
Rassweiler氏は、「Apple TVとほか(Mac MiniやiMacに関する同様の分析)を比較すると、間違いなくこちらの方が(原価が)高い。237ドルは299ドルの80%にも相当する。マージンがあまり残らないということだ」と語っている。
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