MITなど、100ドルノートPCの詳細を発表--ゼンマイ駆動も可能

Mike Ricciuti(CNET News.com)2005年09月29日 12時05分

 マサチューセッツ州ケンブリッジ発--一般大衆向けの低価格コンピュータが、また一歩実現に近づいた。

 マサチューセッツ工科大学(MIT)のMedia Lab創設に携わったNicholas Negroponteは米国時間28日、発展途上国の子供向けに設計した、ゼンマイで動く100ドルのノートPCについて詳細な仕様を説明した。

 Negroponteは、1月にスイスのダボスで行われたWorld Economic Forum(ダボス会議)でこのノートPCの原案を発表していた。MITと同氏が主催する非営利団体「One Laptop Per Child」は、子供たちに最大1500万台のテストシステムを提供すべく、ブラジル、中国、タイ、エジプト、南アフリカの5カ国と交渉中だという。

 さらに、マサチューセッツ州もMITと協力し、同州内の学校の児童にこのノートPCを配る計画を進めていると、Negroponteは付け加えた。

 同氏はこの日、MITで行われたTechnology Review誌主催の「Emerging Technologies Conference」でプレゼンテーションを行い、「これは自分の人生で最も重要な仕事だ」と述べた。「これまでの反応は素晴らしい。その狙いは単純なものだ。これは教育プロジェクトであり、ノートPC製品の開発プロジェクトではない。小中学校を中心に教育環境を改善できれば世界も良くなる」(Negroponte)

 同氏によると、このプロジェクトの目標は、低価格PCの概念を、Linux OSや無償オンライン百科事典「Wikipedia」のような、広範な草の根運動に変えることにあるという。「言うなればオープンソース教育だ。これは重要な問題だ」(Negroponte)

 Negroponteによると、この取り組みではノートPC1台に付き約100ドルを各国政府に負担してもらい、生徒たちにはこれらを無償で配布する仕組みだという。

 提案されたマシンは、500MHzのプロセッサ、1Gバイトのメモリ、そして革新的なデュアルモードディスプレイの搭載が提唱されている。フルカラーモードと、太陽の下でも見える白黒モードという2つのモードで使えるこのディスプレイの採用で、同マシンは「電子ブックにもノートPCにもなる」と、同氏は説明した。

 このディスプレイの設計については、MITのMedia Labが開発した、フラットで曲げることもできるプリントディスプレイを採用することも検討されている。Negroponteによると、この技術を使えば1平方インチあたり約10セントで製造可能なディスプレイが実現するという。「12インチディスプレイで12ドル、消費電力はほぼゼロが目標だ」(Negroponte)

 Negroponteによると、新システムの電源は、従来の交流電源やバッテリのほか、ノートPCの横に付いたハンドルからも供給するようになるという。これは、同計画がターゲットにする多くの国では、都市から離れると電気の供給がないためだ。

 Linuxが動作する同マシンには、MITの研究者が開発したものや、各国独自のソフトウェアなど、アプリケーションもいくつか搭載される。「ソフトウェアは肥大化しすぎ、信頼性が低くなっているため、われわれはLinuxを採用することにした」(Negroponte)

 ネットワークへの接続についてはWi-Fiと携帯電話に対応するほか、USBポートも4基搭載され、さらに「メッシュネットワーキング」に対応する機能も内蔵される。これは、1つのインターネット回線を複数のマシンで共有できるようにするピアツーピア(P2P)のコンセプトの1つ。

 「新興国ではもはや接続に関する問題はない」とNegroponte。「確かに以前はそれが問題だった。だが、国際競争のおかげで、いまでは多くの人々がその解決に取り組んでいる。しかし、教育分野ではラップトップが障害になっている」(Negroponte)

 Negroponteは、1年以内に用意する最初の500万〜1500万台のテスト機の開発に関し、Google、Advanced Micro Devices(AMD)、News Corp、Red Hat、BrightStarの5社がMITに協力していることを明かした。現在の計画では2007年までに1億〜1億5000万台を製造することになっていると、同氏は述べた。

 Negroponteは、この目標が大胆であることを認めている。現在製造されているノートPCの台数は、全世界合計で5000万台をわずかに下回る程度だからだ。

 各国政府との協力がこのプロジェクトの当初の目標だったが、MITではデザインをライセンスするか、これをサードパーティーに提供して市販バージョンを製造してもらうことも検討していると、Negroponteは述べた。

 「200ドルで販売し、20もしくは30ドル程度の利益が出れば、それを子供向けのラップトップ製造に回せる。この件については現在も検討中だ」(Negroponte)

 低価格PCのアイデアはこれまでにも何度か出されていたが、MITのこのプロジェクトが最も野心的かもしれない。

 Advanced Micro Devices(AMD)も昨年、「Personal Internet Connector」という計画を発表した。このプロトタイプは、185ドルからという価格で、ディスプレイは付属しない。また、Novatiumというインドの会社も、必要最低限の機能だけを搭載する家庭用コンピュータを約70もしくは75ドルで発売する計画を明らかにしている。

 さらに、著作権侵害対策に熱心なMicrosoft CEOのSteve Ballmerも昨年、発展途上国向けの100ドルPCへの取り組みを提唱している。

この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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