XboxやPlayStationの次世代ゲーム機について、ゲーム開発を25年以上手がけてきたWarren Spectorは複雑な感情を抱いている。
Ion Stormの元スタジオディレクターで、「Wing Commander」から「Deus Ex」に至るまで、さまざまなゲームタイトルの責任者を務めてきたSpectorは、待望の次世代ゲーム機について、プレイヤーにとっては最高に素晴しいものになるだろうと考えている。高解像度のグラフィックスに信じられないほど高速な処理能力、臨場感あふれるサウンド、またこれらのゲーム機がもたらすエクスペリエンスは従来のゲーム機と全く比べ物にならない。
しかし良いことばかりではない。Spectorをはじめとする開発者は、ゲーム業界がハリウッドの映画産業のようになってしまうのではないかと懸念している。莫大な予算をかけて大掛かりな作品が連作ものとして制作され、トップクラスのタイトルを開発するだけの資金力をもつ一握りの大企業が市場を独占するのではないか、と言うのだ。
「ハードウェア企業が何か素晴しいことができる器を提供すれば、大金を使って何か素晴らしいことをしようとする者が現れる」とSpectorは言う。「それによって、世間の品質に対する要求も厳しくなる。2000万ドル〜3000万ドル、あるいは4000万ドルもの大金を投じる者が現れたら、資金力のない私たちは、競争を勝ち抜くために何らかの方法を考えなければならなくなるだろう」(Spector)
MicrosoftのXbox 360やソニーのPlayStation 3が世間の注目を集めるなか、ゲーム開発者やゲーム制作会社の間ではこういった懸念が急速に広がっている。ゲーム業界は事業性、創造性の両面でレベルアップしてきているが、それが意味することを理解している人は少ない。
ゲームビジネスが大きな市場規模を誇ることは、ここ数年間のデータを見ても明らかだ。NPD Groupによると、ビデオゲーム関連のハードウェアおよびソフトウェアの2004年における売上高は米国内だけで99億ドルに達している。これは、米映画業界の2004年の総興行収入を数百万ドル上回る数字だ。
しかしこの成長の過程で、ゲームの制作工程は大きく変化した。かつては、1名〜数名の開発者がひらめきをもとにゲームを開発していた。1970年代初めにテレビゲームブームを巻き起こしたゲーム「Pong」は、AtariのAl Alcornが創業者のNolan Bushnellの指示を受けながら単独で開発したゲームだった。
PlayStation 2やXboxの時代を迎えた頃、最も大規模なゲームの開発は数十人からなる開発チームの手で行われ、開発に1000万ドル以上の予算が費やされることも多かった。ここ数年、業界関係者の一部は、このような開発手法では、開発者は創造性を発揮できなくなり、ゲームのジャンルもスポーツや射撃、ストラテジー、そしてロールプレイングなどの売れ筋商品に限られてきていると不満を訴えている。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス