あと数年もすれば、ホームシアターシステムをポケットに入れて持ち歩けるようになるかもしれない。
フィンランドのUpstream Engineeringでは、LED(発光ダイオード)式投影システムの開発に取り組んでいる。この装置は小型で比較的低価格であることから、製造コストを数ドル追加するだけで、MP3プレイヤーや携帯電話機など各種の携帯端末にプロジェクタ機能を組み込めるようになる可能性がある。
これが実現した場合、携帯電話を順番に手渡してビデオや写真を見せるのではなく、画像(もしくはビデオ)を壁に映し出せることになる。この装置は、輝度こそ標準的なプロジェクタにはかなわない。だが、これがあれば、携帯電話やMP3プレイヤーの小さい画面に閉じこめられている画像を開放することができる。
同社が試作した現行の光学エンジン部分は、マッチ箱程度の大きさしかない。また、これを組み込むプロジェクタの本体は携帯電話ほどの大きさになる。現在も、いくつかの企業が小型プロジェクタを製造しているが、これらのサイズはもっと大きく、小振りなデジタルビデオレコーダーほどの大きさがある。
Upstreamは、LEDが発光した光を数千の小さいビームに分けてディスプレイに導くという自社で発明したテクニックを使って、この小型化を実現した。光源がロウソクであれLEDであれ、光は本来あらゆる方向に向かって照射される。Upstreamは、光を光源の近くに集め、その大部分を狙った目標めがけて照射するという、複雑なマイクロ光学システムを開発した。この「Photon Vacuum」と呼ばれる光学システムはLEDを包み込む形になっている。これにより、超小型の光学パッケージで、大型システムとほぼ同レベルの照明効率を実現できる。
Upstreamの創業者兼社長であるMikko Alasaarelaは、「1つひとつの光線を集めてディスプレイ本体に照射するという考え方だ。さまざまな業界で活動する約150社から問い合わせがきている」と述べた。
ベンチャー事業会社Crosslink CapitalのパートナーDave Epsteinによると、シリコンバレーの新興企業のなかにも、LED光線のフォーカス技術開発に取り組んでいるところが複数あるという。
現在、LEDはメーカーや研究者の間で大きな人気を集めている。日本の研究者らは車輌間の無線データ通信にLEDを利用したいと考えており、またテレビメーカーやディスプレイメーカー各社では、LEDを採用する製品を増やしている。LEDは消費電力が少ないだけでなく、何年にもわたって使用でき、しかも水銀を含まないという特徴がある(一部の電子機器には有害な水銀が少量だが使用されている)。
また、Upstreamの開発した光学システムはパーツの数が少ないため、LEDをつかったプロジェクタなら低価格で製造できるようになる可能性もある。このシステムの光学シェルは、プラスティックのインジェクション・モールド(射出成形)で大量生産が可能だ。このPhoton Vacuumの基本システムは、LEDと統合型光学システムからできており、大量購入時には1個あたり10ドル以下で販売されるようになる可能性が高い。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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