Rick Broidaは、Palm OSの非常にシンプルなつくりに感動したあまり、1997年にはこの携帯端末用OSを採用したデバイスを専門に扱う「Tap」という雑誌まで発刊してしまった。
ミシガン州コマースタウンシップ在住のこのフリーランスのライターは、Palmの各種端末とそれを動かすOSの長年のファンだ。そんな同氏は、数年前から続くPalmのシェア低下と、かつて熱狂を巻き起こした携帯端末市場の冷え込む様子を目にしてきた。ハードウェアメーカーのpalmOneは今もこの市場をリードしているが、OSメーカーのPalmSourceのほうは、あるアナリストの言葉を借りれば、「リスキーな戦略にかける過渡期の会社」だという。
Broidaはもっと率直な言い方で説明する。
「彼らは、かつては追われる立場にいたが、今では追う立場になっている。特定の分野ではWindows Mobileに追い越され、Palm OSが後れを取っていることは確かだ。とにかく彼らからは熱意が感じられない」(Broida)
PalmSourceは、スマートフォンや高機能携帯電話に同社のOSを組み込むという野心的な計画を掲げた。これらの製品は出荷台数や成長面で携帯端末市場を大きく上回るとみられている。しかし、同種のサプライヤー、縮小し続ける市場、そして同OSに関心を示すメーカー数が予想を下回るなど、同社は難問を抱えて悪戦苦闘している。
2003年に携帯端末メーカーのpalmOneと分裂したとき、PalmSourceの経営陣はこのような状況を想定していなかった。palmOneとPalmSourceが分離する前は、Palmが新しいソフトウェアの機能を投入する際、同社のハードウェアが他社製品よりも優先されるのではないかとの懸念を同OSのライセンス先企業が抱いていた。だがOSとハードウェアを受け持つ部門を別々にしたことで、PalmSourceはpalmOneとの競合を心配することなくライセンシーを増やせるようになると思われた。
しかし、期待に反してPalmSourceのライセンシーの数は減少してしまった。ソニーは携帯端末市場から撤退し、palmOneはマーケットシェア第2位だったHandspringを買収した。
PalmSourceにとっては、いまだに苦しい日々が続いている。米国時間19日には、同社CEOのDavid Nagelが、理由の説明もなしに突然辞任してしまった。また、調査会社IDCによると、2004年には、Microsoftの携帯端末用OSを採用したデバイスの出荷数が初めてPalm OSのそれを上回ったという。
また、Microsoftは携帯端末市場でのリードをさらに広げるものとみられている。今年全世界で出荷される携帯端末のうち、49%はWindows Mobileを採用し、さらに同OSのシェアは2009年までに56%に達するとみられている。それに対し、PalmSourceのシェアは、2005年の44%から2009年には38%にまで低下するという。
さらに厄介なのは、PalmSourceにとっては従来の携帯端末が依然として主要な収益源となっていることだ。だが、本当はこうなるはずではなかった。
同社はスマートフォン向けの新OS「Cobalt」を開発したが、顧客はこれを採用した製品をまだ発売していない。
「Cobaltは、新しいライセンシーと新しいハードウェアを獲得し、同社を大きく成長させるはずだった。だが、実際にはそうなっていない」と、調査会社IDCのアナリストKevin Burdenは述べている。
しかしPalmSourceは、Cobalt搭載デバイスがまもなく登場するとしている。
PalmSourceの暫定CEO、Patrick McVeighは、Cobaltの「市場投入準備」は着々と進んでいるとしたが、しかし詳細については明かさず、ただスマートフォンメーカーの新製品開発には約18カ月かかるのが一般的だと指摘しただけだった。
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