「2010年までに一般化するサービスの基本形は出揃った。ユビキタス社会の実現は目前に迫っている」-- 松下電器産業代表取締役社長の中村邦夫氏は10月5日、同日より幕張メッセで開催されている「CEATEC JAPAN 2004」で基調講演に立ち、「『技術立国・日本』が創るユビキタス社会」というテーマについてこのように述べ、今後普及するとみられる技術・サービスを紹介した。
中村氏によると、ユビキタス社会とはいつでも、どこでも、誰でもネットワークにアクセスしてサービスを利用できる社会のこと。「ネットワークインフラ、端末、サービス」の3つによって構成されるという。中村氏は、ネットワークはブロードバンド、モバイル、IP化の3点が、端末には操作性、音声/画質のアナログ技術、小型化が、サービスは生活に必要とされるものが重要になると説明する。
松下電器産業 代表取締役社長の中村邦夫氏 |
インフラについては、ブロードバンドインターネットサービスの利用者が全世帯数の約半数を占めるようになったことや、地上デジタル放送の開始、携帯電話利用者の約70%がインターネット接続可能な端末を利用していることなどを挙げ、「世界有数のインターネット先進国になった」と胸を張る。
端末については、通信と放送の融合によって、PCとテレビの役割が変化してきていると指摘する。これまでPCは端末から30cmの距離で個人が利用するもの、テレビは3mの距離で大勢が視聴するものと言われ、PCは静止画を、テレビは動画を楽しむものだとされてきた。
しかし、通信と放送が融合することで、ブロードバンドを利用してPCでドラマを楽しむ「ブロ・ドラ族」が登場したと中村氏は話す。韓国ドラマブームがけん引役となり、ブロードバンドで好きなときに好きなコンテンツを楽しむ人が増えているという。一方でテレビは松下電器の「Tナビ」のようにインターネットに接続して、チケット情報を見たり買い物をしたりすることができるようになっている。「見るテレビから使うテレビへと変化している」(同氏)
サービスについては、戸締まりの確認などの「安心・安全を実現するもの」(同氏)に対する消費者のニーズが最も高いという。現在は携帯電話とネットワークカメラを連携させ、外出先から家の中の様子が映像で見られるサービスが実現していると中村氏は紹介した。また、機器を簡単に操作できることへのニーズも強いといい、松下電器では携帯電話で家電を遠隔操作できる「くらしステーション」というサービスを提供していることを紹介した。
中村氏は「技術立国・日本」というテーマについて、「日本の技術にはユビキタス社会の実現に不可欠なものがたくさんある」と話す。具体的には生体認証技術、監視センサー、暗号技術などだ。デジタル家電の分野ではディスプレイパネルや半導体などに日本は強みを持っており、環境問題が大きな注目を集めるなか、紙の代替となる電子書籍や燃料電池といった技術も、日本企業が実用化に最も近い位置にいるとした。
今後は消費者1人1人の要望を出発点として「自分に合うサービス」を消費者が自ら発信し、選んでいくサービスが主流になると中村氏は予測する。「家電の登場は主婦を家事労働から解放し、趣味を楽しんだり、女性が社会に出たりする手助けとなった。これからのデジタル家電には新たな豊かさを提供していく使命がある」と話し、講演を締めくくった。
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