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中国の清華大学と米ルイジアナ州立大学(LSU)の研究者らが、一般的なタングステンフィラメントの代わりにカーボンナノチューブを用いた電球のプロトタイプを開発した。
このナノチューブ電球は、従来のものと比べて消費電力が少なく、しかも明るさでは上回っている。この技術が実用化されれば、百数十年ぶりに電球の構造が大幅に変わることになる。この研究結果は、「Applied Physics Letters」誌上で発表されたもので、PhysicsWebというサイトが最初に報じた。
カーボンナノチューブは現在、奇跡を起こす未来の素材として姿を現しつつある。鉄よりも強く、大半の金属と比べて電導効率の高いこのチューブは、将来高密度メモリチップや強度の高い飛行機部品、軽量で送電効率の高い電力線などの製造に用いられる可能性があると、研究者たちは考えている。
ナノチューブは製造や操作が複雑であることから、先に挙げた応用例のほとんどは、たとえ実現するとしても、何年も先のことになるだろう。それでも、一部の企業ではすでにナノチューブをポリマーやコーティングに採り入れて、強度の高いプラスティック板や非腐食塗料を製造している。
清華大学のJinquan WeiとLSUで働く清華大卒業生のBingqing Weiは、数本のナノチューブをアルコール溶液に浸し、チューブを集めて長いフィラメントを作り出した。2人はその後、通常の40ワット電球に用いられているタングステンフィラメントをこのカーボンフィラメントに取り替えることに成功した。
そのほかの発見として、この研究チームは、カーボンフィラメントは低いボルト数のしきい値で光を放射しはじめたと結論付けている。通常のしきい値が6ボルトであるのに対し、カーボンフィラメントの場合3〜5ボルトの範囲だったという。また、電球は25ボルトで360時間持つことも分かった。
Weiは、カーボンフィラメントを用いた電球はここ3〜5年で市場に登場するだろうと予言したと、PhysicsWebは報じている。
そのほかのナノチューブの研究プロジェクトの中では、光と波長の長さが課題だった。2003年には、IBMやいくつかの大学の研究所が、ナノチューブが光を放射することを実証している。また、スタンフォード大やデューク大などの大学が、比較的長いナノチューブを製造する方法や、チューブをより大きな構造物の中に並べる方法を見つけ出している。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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