ラスベガス発--米Intelは、けっして冗談で「家電市場に関心がある」と言っていたわけではなかった。
同社社長のPaul Otelliniは8日(米国時間)、ラスベガスで開かれていたConsumer Electronics Show(CES)で、同社の家電分野に対する戦略について、具体的な詳細を説明した。この戦略のなかには、数多くの新市場への参入や、メーカー向けの新製品の設計などが含まれている。
「今年家庭向けに販売されるデジタル機器の数は、3億5000万台を上回る。コンピュータ業界と家電業界という2つの世界の境界線が曖昧になりつつあり、また消費者は家庭内での変化を求めている。たとえば、だれでも複数のビデオ映像が見たいと思っているのだ」(Otellini)
同社のこの取り組みの中から最初に登場してくる製品は、Entertainment PCもしくはEPCを呼ばれるものだ。これは、正真正銘のWindows XP Media Centerを搭載したパソコンだが、ただし外見はビデオレコーダーによく似ている。このEPCにはキーボードは付属せず、完全にリモコンで操作するようになっている。また、パソコンのように専用ディスプレイを持たず、セットトップボックスのようにテレビとつないで使う。Intelは、個人ユーザーがEPCを利用して、音楽データを保存したり、写真やビデオを観たり、あるいはTiVoのパーソナルビデオレコーダーと同様にテレビ番組を録画するといった使い方をしてくれることを期待している。
米Microsoft会長のBill Gatesも、7日夜(米国時間)CESでの基調講演で、Windows Media Center Extenderというテレビ用セットトップボックスを披露した。だが、IntelのEPCはそれよりさらに手の込んだものだ。Windows Media Center Extenderにはハードディスクは付属しておらず、データファイルは別のPCに保存したものを取ってくるようになっている。これに対し、EPCはそれ自体がコンピュータであり、また他のデバイスが接続する無線アクセス用のハブとしても機能する。
EPCには、Intelが間もなくリリースするPrescottプロセッサが搭載されている。Prescottは動作速度3GHz以上という高速なチップだ。また、Otelliniがインタビューのなかで明かしたところでは、今年半ばに登場予定のEPCの価格は799ドル前後になるという。IntelはEPCの設計を行ったが、生産や販売についてはライセンス供与の形でPCメーカーに委ねる。これと同様の事例はこれまでもあり、米Gatewayが現在販売しているオールインワン(一体型)の薄型平面テレビは、昨年Intelが設計に取り組んでいたものである。
Otelliniはまた、今年末までに、同社の開発する大画面テレビ用プロジェクションシステム「Cayley」を利用した、最初のテレビが登場してくると語った。中国のTCLをはじめとする複数のメーカーが、Cayleyを使ったテレビを生産することをすでに確約しているという。
さらにOtelliniは、今年数多くのメーカーから、Intelチップを搭載したスタンドアロン型のパーソナルビデオレコーダーやポータブルビデオプレーヤーが登場するだろうと語った。
Intelは、来年2005年には、デジタルプリンタ向けの画像処理用チップの販売を開始し、またデジタルビデオカメラにも自社のマイクロプロセッサが搭載されるようになると予想していると、Otelliniは述べた。デジタルビデオカメラには、当初は同社のXscaleチップが使われるが、次第にx86プロセッサをベースにしたものに移行していくという。x86のアーキテクチャは、現在のデスクトップ用Pentiumの設計に使われているものだ。
「x86の素晴らしいところは、どれも同じ点にある。あらゆる標準がますます家電製品を意識して定められている」とOtellini。これまで、家電製品で使われるチップの多くは、それぞれの用途に合わせてつくられた特注品だった。
Otelliniによれば、コンピュータ業界がかつて経験したようなパターンが、今後は家電業界でも多く見られるようになるという。つまり、ある標準を採用するメーカーが増えればふえるほど、製品の開発から市場投入までの時間が短縮され、同時に価格も低下するというパターンが、家電製品でも起こる。たとえば、以前は開発に3年〜5年を要していた家電製品も、いまでは9カ月〜18カ月で市場に出てくるようになっている。
「我々コンピュータ業界の人間は、こうした変化を経験済みだ」(Otellini)
携帯機器の分野に関して、Intelは「Florence」というノートPCのプロトタイプを開発しており、CESではOtelliniとAnand Chandrasekher(同社モバイル部門ゼネラルマネジャー)がこの試作機を披露していた。このノートPCには、リモコンとして使えるマウスも付属し、またキーボードの側面からスライド式に取り出せるWi-Fi電話の受話器も付いている。
Chandrasekherはまた、Carbonadoという携帯端末用グラフィックチップも発表した。Intelは、ずっと昔にPC向けのグラフィックチップを製造していたことがあるが、芳しい結果を出せずに同市場から撤退していた。同社は現在、グラフィック処理機能を内蔵したチップセットを生産しているが、単体の製品はつくっていない。なお、米Dellでは次期Aximに、このCarbonadoチップを使う予定だ。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス