シャープは1月8日、 同社代表取締役社長の町田勝彦氏による年頭記者会見を開催した。大型液晶テレビを生産する亀山工場のラインを増強することを発表したほか、同社が扱う白物家電のラインナップを全面的に見直す考えを明らかにした。
会見で町田氏はまず、2004年の国内需要予測について紹介した。「昨年の年頭記者会見で『2003年は薄型テレビとブラウン管テレビの売上金額が逆転するエポックメイキングな年になる』と言ったが、実際に2003年は金額ベースで薄型テレビがブラウン管テレビを1000億円ほど上回るだろう」と紹介。2004年は地上デジタル放送の開始やアテネオリンピック開催が追い風となって、本格的な需要拡大が見込めると語る。「液晶テレビ(の出荷台数)は前年の2倍、プラズマテレビは2.2倍になるだろう」(町田氏)。DVDレコーダやデジタルカメラの伸びと合わせ、AV分野における2004年度の国内需要は前年比10.6%増の2兆1590億円になると予測する。また、国内需要全体でも前年比6.5%増の13兆7628億円と2年連続で堅調な伸びを示すとした。
続いて町田氏は、ユーザーの動向についても紹介した。「先行き不安の続く中、社会や他人に任せていても不安は解消しないと皆が気づき始め、明日に備える消費を始めている」(町田氏)。このような中で、3つのマーケットが生まれていると指摘する。それはデジタル家電など従来商品との違いを鮮明に打ち出し、世代交代を強く印象付ける「世代替えマーケット」、環境に配慮し、自然環境作りに参加しているとユーザーに感じさせる「環境役立ちマーケット」、健康、衛生、安心面で効能をはっきり訴える「元気・安心マーケット」だ。「最近のユーザーは驚きや感動がないと商品を購入しない」(町田氏)
こういったマーケットで売れているものは、どれも新しい独自の技術やデバイスが入っていると町田氏は分析する。「ユーザーオリエンテッドではなく、テクノロジーオリエンテッドなものを作らないといけない」(町田氏)
亀山工場に第2、第3期生産ラインを増設
会場では45型液晶テレビの試作品が公開された | |
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そこでシャープが力を入れるのが、同社の成長を牽引している液晶分野への投資だ。シャープは31年前から液晶の開発を進めており、「いよいよ本格的に液晶がテレビに使われる年になってきた」と町田氏は語る。2004年度のシャープの投資総額は2200億円だが、そのうち1000億円を大型液晶に、300億円を中小型液晶に振り向ける。
特に大型液晶テレビの需要が当初の予想を上回る勢いで伸びていることから、シャープでは1月5日に稼動開始した亀山工場に第2期生産ラインを導入する。このラインは8月に稼動を始める予定だ。マザーガラス投入枚数は現在月間1万5000枚(26型ワイド液晶モジュール換算で月18万台に相当)だが、これにより8月には月間2万7000枚(同32.4万台)になる。さらに2005年初頭をめどに、第3期生産ラインを導入することも明らかにされた。これにより2004年度末には現在の3倍の生産能力を持つという。
亀山工場は第6世代と呼ばれる1500 x 1800ミリの大型マザーガラスを採用し、液晶パネルの生産から液晶テレビの組み立てまでを一貫して行う。生産稼働する液晶生産ラインのうち、第6世代のものは世界初という。ここでは25型以上の大型液晶テレビを生産する。亀山工場に対する2004年度の投資金額は合計900億円といい、大型液晶テレビに対する投資額の90%を占めることになる。
「デジタル家電向け液晶は日本勢が有利」
大型の液晶テレビは、韓国、台湾などのメーカーも力を入れている分野だ。例えばライバルのサムスン電子はソニーと提携し、第7世代と呼ばれる1870 x 2200ミリのマザーガラスを利用することを決めている。こういった企業との競争について、町田氏は生産技術と開発技術の2点で差別化を図ると語る。
生産技術で町田氏が指摘したのは、ガラス基盤の問題だ。現在の液晶テレビはすべて大型のマザーガラスを切り分ける形で生産されている。しかしブラウン管テレビでは、インチサイズごとにガラス基盤を製造する方法が一般的だ。液晶テレビでも同様の方法を取ったほうが良いのではないかと町田氏は話し、現在調査を進めているという。
開発技術については、日本勢に優位性があるとする。PCを中心に起きた第1次IT革命では、液晶ディスプレイもPCモニターという汎用ディスプレイ中心の競争だったと指摘し、ここでは大量生産能力のある企業が有利だったと町田氏は言う。しかし現在はデジタル家電を中心とした第2次IT革命が起きており、ここでは各商品の要求に応じられるきめ細やかさが重要になるというのだ。「日本メーカーが生き残るチャンスが出てきた」(町田氏)
シャープでは大型液晶テレビのほか、小型のシステム液晶や太陽電池の生産にも力を入れていく方針だという。
2004年の白物家電は「背水の陣」
一方で、かつてシャープの事業を支えた白物家電については、大なたを振るう考えだ。町田氏は今回初めて、製品の絞り込みを行うことを明らかにした。同社が持つ製品群のうち、今後も技術革新が見込めるものだけを残すという。「中国の10年後を考えれば、小手先の工夫では通用しない。既存の技術しかないものはやめるべき」(町田氏)。2004年は開発を続ける製品を見極める節目の年になるという。「日本メーカーにとって最後の年という気持ちでやっていく」(町田氏)
また、独立分離して子会社化するとの噂もあるPC事業については、「利益が出にくい商売であり、拡大志向は持っていない」(町田氏)と述べるにとどめた。
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