永井美智子(CNET Japan編集部)
2003/09/26 18:45
9月26日から幕張メッセで開催中の東京ゲームショウ2003において、任天堂代表取締役社長の岩田聡氏が基調講演を行った。同社の家庭用ゲーム機「ファミリーコンピュータ」の発売から今年でちょうど20年となったこともあり、家庭用ゲーム機の歴史を振り返りながら、ゲームビジネスの今後について警鐘を鳴らした。
従来の成功法則はもう限界
コンピュータエンターテインメント協会の調査によると、国内のゲームソフト出荷額は1997年をピークに減少を続けている。この原因として景気低迷や少子化などが挙げられることが多いが、岩田氏は「ビデオゲーム市場は、過去には景気の影響を大きく受けずに発展してきたため、景気低迷を主たる要因とすることには無理がある。また、対象年齢層が高いとされているPlayStation 2などのゲーム機でも、ソフト市場の縮小が起きている以上、少子化を理由にしても説明がつかない」と切り捨てる。
では、ソフト市場が低迷している原因は何か。岩田氏は、過去20年間の成功法則が限界に来ているためだと指摘する。今まではハードの大容量化に伴い、より複雑で凝ったゲームを市場に出すことで、ゲームユーザーを満足させるという手法が採られてきた。しかしその結果、遊ぶのに時間とエネルギーがかかりすぎてしまい、一般のユーザーが敬遠するようになってしまったというのだ。
「あらゆる娯楽はユーザーの限られた時間を奪い合う競争の中にあるのに、これでは時代に逆行している。昔はゲームをしていたが、最近では忙しくてとても付き合えないという人は多い」(岩田氏)
「間口が広くて奥も深い」ゲームの開発が成功の鍵
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| 任天堂代表取締役社長、岩田聡氏 | |
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では、どのようなゲームの開発が今後求められてくるのだろうか。岩田氏が提案するのは誰にでも遊べる上で、プレイヤーの趣向に応じて深みを追求できる、「間口が広くて奥も深い」ゲームの開発だ。「本来ゲームには対象年齢を限定する発想はなく、ゲームを始めるのに前提知識や必要なスキルなどいらないはず。誰もが気軽に遊べるのが本来のゲーム機の姿だ」(岩田氏)
さらに岩田氏はその成功例として、任天堂が2002年11月に発売した「ポケットモンスター」の「ルビー」と「サファイア」を挙げる。この2つは同社の携帯用ゲーム機「ゲームボーイアドバンス(GBA)」対応のゲームで、現在までに国内で479万本、全世界合計で1000万本以上が出荷されているという。
「誰でも遊べる優しく丁寧な導入と、(通信ケーブルを使って)周りの人たちと対戦・交換する楽しみを提供することで、間口の広さと奥の深さを両立させている。これが世界中の人たちに受け入れられた理由だ」と成功した理由を分析した。
「ゲーム中に録画のできないHDDレコーダに存在価値はない」
岩田氏は今後のゲームのトレンドと言われる多機能ゲーム機とオンラインゲームについても触れ、厳しい見解を見せた。多機能ゲーム機については、PlayStationにDVDプレーヤーが付いたPlayStation 2が爆発的に普及したことから、いろいろな機器と融合した多機能マシンが今後の主流になるのではないかと言われている。これに対し岩田氏は慎重に考える必要があると警告する。「PlayStation 2の場合、ゲーム機をしながらDVDを見るということはありえない上に、ゲーム機にわずかなコストを追加するだけでDVDの機能が実現できた。しかし、いつもこのように都合の良い組み合わせになるとは限らない」(岩田氏)
ライバルのソニーはDVDの記録再生機能やHDDレコーダ機能を備えた新型PlayStationの「PSX」を年末に発売すると発表しているが、「ゲームをしているときに録画ができないようなHDDレコーダに存在価値はないと考えている」(岩田氏)と手厳しい。さらに、「もちろんソニーはそんなみっともないことはしないだろう」(岩田氏)とライバルを牽制する姿勢も見せた。
もうひとつ、今後のゲーム業界のトレンドとされているのがオンラインゲームだ。しかし岩田氏はこの点にも疑問を唱える。「ゲーム業界の1ジャンルとしてオンラインゲームが存在することを否定するつもりはない。しかし、これからは全てオンラインゲームだとか、オンラインでないものは価値がないといった話は暴論だ」(岩田氏)
「彼らの主張は、かつて『これからはマルチメディアだ』とか、ドットコムブームの時に『今は赤字でも、これからインターネットは有望だ』と言っていたのと同じ、“ハイテク詐欺師”のロジックだ」(岩田氏)とこれらの説を一蹴した。
ワイヤレスアダプタを4800円のソフトに同梱
オンラインゲームには慎重な任天堂だが、ネットワークを活用することには前向きだ。任天堂は来年初めに販売するポケットモンスターの新ソフト「ファイアレッド」と「リーフグリーン」では無線ネットワークを利用して、対戦や交換ができるようにするという。GBA専用のワイヤレスアダプタをソフトに同梱し、価格は従来のソフトと同じ4800円に据え置く。通信料や利用料も必要なく、「普及への障害には一切ならないようにする」(岩田氏)という戦略だ。
「今まではケーブルをつながなくてはならず、顔見知りでない人とゲームをするのは難しかった。しかし無線であれば、コミュニケーションのチャンスが広がる」(岩田氏)
無線の規格はBluetoothや802.11xなどではなく、モトローラの独自技術であるという。通信距離は数メートルが限度とのことだが、リアルタイム性を重視した結果、今回の採用に至ったようだ。店舗や駅に無線基地局を設置してデータの配信サービスを行ったり、スタンプラリーを行うほか、無線基地局を介して遠隔地と通信することも考えているという。新ソフトと共にワイヤレスアダプタを普及させることで、今後は他のゲームにおいても無線通信を利用した遊び方を提案し、携帯ゲーム独自の新しい遊びの構造を作り上げていきたいとした。
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