「切ってもきれない」が「つかず離れず」に--アップルとアドビの冷え込む関係 - (page 2)

David Becker (CNET News.com)2004年03月31日 11時17分

 AdobeとAppleの関係は、1980年代前半までさかのぼる。当時Adobeは、PostScriptの開発元としてビジネスを立ち上げたばかりだった。PostScriptは、パーソナルコンピュータを使って立派な出来映えの印刷物を作れるようにしたフォント技術で、Appleはこの技術に惚れ込んで、デスクトップパブリッシングを普及させ、またこれをMacの売上を伸ばす原動力の1つへと変えた。

 「両社はある時期、技術やマーケティングに至るまで、本当に切っても切れない関係だった。Adobeが優れたレーザープリンタの出力を実現し、Appleが印刷向けに優れたプラットフォームを作り出していた」(Tarter)

 しかし、その後、Windowsがパブリッシング用のプラットフォームとして徐々に実力を付けてきた。そして、グラフィックデザインや出版などの視覚的な部分に関する要求がきびしく、Appleにとって非常に重要な顧客層である「プロのクリエーター」からの支持を奪っていった。

 「かつて、グラフィックアーティストが利用していたプラットフォームは、事実上Macだけだった。だが現在では、WindowsマシンとMacは機能的には同等で、Adobeも自然にMicrosoftに注目し始めたことで、Appleへの関心は下がっていった。これが両社の関係が疎遠になった一番の原因だと思う。結局は(売上やユーザー数という)数字なのだ」(Tarter)

 こうした考えに同意する者は他にもいる。「後退する一方のAppleのシェアを考えれば、これは純然たる算盤勘定だ」と、ニューハンプシャー州ナシュアに本社を置くコンピュータサービス会社、CCS New Englandの社長で、自らもMacユーザーであるBurt Janzはコメントした。同氏は、売上が開発費やサポートコストをカバーできないほど小さいMac市場で、Adobeがアプリケーションを販売する意味があるかどうかと疑問を投げかけた。

 これに対し、両社の関係はいまだに良好で、単に慎重にビジネス上の決定を行っているだけだと主張するAdobeやMacの支持者もいる。ケンタッキー州オーウェンズボロに住むイラストレーターのChad Hamletは、AdobeがOS Xを早いうちから支持してきたし、新しいMacハードウェアのさまざまな機能を最初に利用したベンダーの1つであることを指摘した。

 「AppleとAdobeの関係はずっと変わっていない、あるいは数年前に比べるとむしろ良くなっているかもしれないと思っている。Adobeが、G5プロセッサの64ビット機能を活用する、Mac G5用に最適化されたソフトウェアを発表した最初のベンダーの1つだったことを思い出して欲しい」と、Martinは語った。

 ロサンゼルス在住のMacユーザー、Chase Holdenは、特定のMac製品のサポートを中止するというAdobeの決定は、Appleがどうすることもできないビジネス上の要因に対する賢明な反応だったと述べ、その一例としてFrameMakerのサポート中止を引き合いに出した。

 「Adobeは、FrameMakerユーザーを、Macで動作する上位製品のInDesignへ移行させようという合理的な決定を下した。パブリッシングソフトウェア市場は飽和状態に達しており、Adobeには限りのある同一の市場で2つの製品を販売する必要はなかった」(Holden)

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