暗号化ソフトウェア「Pretty Good Privacy(PGP)」を開発したPhil Zimmermannは、同プログラムと同じように、ネット電話の安全性を図る取り組みが成功することを期待している。
Zimmermannは、盗聴防止のために通話を暗号化する、インターネット電話アプリケーションのプロトタイプを開発した。このプロトタイプは、ラスベガスで開催中のBlack Hat Briefingsセキュリティ業界カンファレンスにおいて、米国時間28日に公開される予定だ。
インタビューに応じたZimmermannは、「VoIPの安全性確立に貢献したいと考え、このプログラムを公開することにした」と語っている。VoIPは、Voice over IPの略称で、インターネット接続を介した通話を可能にする技術のことである。
通話料が従来の電話サービスより安価だったり、あるいは無料だったりすることから、VoIPの人気は日増しに高まっている。組織などでは、Cisco Systemsといったベンダーの製品を利用することで、独自のVoIPサービスを構築することが可能だ。一般消費者に対しては、Packet8やVonageなどの企業が、ブロードバンド接続口へ差し込んで使用する電話機を提供している。また、Skypeのように、PC上で稼働させるVoIP通話ソフトウェアを販売する企業もある。人気のあるインスタントメッセージングアプリケーションの大半にも、VoIP機能が搭載されるようになっている。
VoIPデータは、すでに暗号化が可能である。もっとも現在の技術では、PKI(Public Key Infrastructure)暗号化システムを用いて、話者の信頼性を確認するデジタル認証を双方に適用し、データ転送の安全性を図っている。だが、このPKIシステムを構築し管理するのは、実に骨の折れる仕事だ。一方Zimmermannの考案したシステムには、PKIが用いられていない。
Zimmermannは、自身の暗号化技術に基づいた製品を販売するビジネスを興そうと考えている。また、他企業にライセンスを供与して、それぞれのインターネット電話製品で同技術を利用できるようにする可能性もあるという。「わたしは、わたし独自の製品を所有することになるが、他企業がみずからの製品にそれを流用することについても認めていくつもりだ」(Zimmermann)
Zimmermannは、自身のプロトタイプを使って通話をすることは可能だが、未解決の問題も存在しており、完成品と言うにはまだ早いと指摘している。これに対してZimmermannは、「これはまだ成熟していない製品だ。暗号化機能は非常に堅牢なものだが、VoIPクライアントには多少バグがある」と話した。なお、同アプリケーションにはまだ公式名称は付けられていない。
このVoIPクライアントは、オープンソースの電話クライアント「Shtoom VoIP」の技術を利用している。Zimmermannによれば、同氏のクライアントはShtoom VoIPに暗号化機能を加えたものだという。
Zimmermannがインターネット電話に保護機能を付加しようと試みるのは、今回が初めてではない。Zimmermannは約10年前、「PGPfone」という製品を早々と開発していた。「まだインターネットが完備されていなかった時代のことだ」と、Zimmermannは当時を振り返り語った。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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