これに比べてSNSの場合は、携帯電話を使ってユーザー認証をするなどの仕組みを取り入れており、1人で複数アカウントを持つ人が少ないため、友人招待に大きなインセンティブを付けやすいとのことだ。
招待機能によるバイラル効果は、椎葉氏がブラウザ三国志で実際に体感したことでもある。リリース当初、mixiのお勧めアプリとしてブラウザ三国志が紹介されていたが、新規加入者数は1日3000〜5000人で、その勢いもすぐに終わってしまった。その後、アクティビティフィード機能を入れたところ、瞬間的に新規加入者数が3倍に伸びたという。ただ、その勢いも長く続かなかったため、11月16日に招待機能を導入した。すると、1日6000〜8000人のユーザーが入るようになり、再びmixiのお勧めアプリとして紹介されたことで1日1万人の新規加入者が来るようになったという。現在でも1日3000〜5000人増えており、12月10日時点では約23万人のユーザーがいる。
友人を招待すると150円分のポイントが付与される。また、プレイしている友人の数だけくじ引きを引けるようになっている。「1度きりの特典だと、最初にほかの人を紹介した人だけがどんどん強くなってしまってゲームバランスが崩れるので、あまりソーシャルな仕組みを入れられない」(椎葉氏)という悩みはあるようだ。
ユーザーの数はほかのアプリに比べて多いとは言えないが、ユーザー1人あたりの利用金額(ARPU)では「mixiでダントツにトップではないか」と椎葉氏は自信を見せる。ブラウザ三国志ではチャージポイント(CP)というポイントを販売しており、早く強くなってゲームを有利に展開したいユーザーが積極的にCPを購入しているようだ。
ただ、広告については「Flashゲームのため、ページビューを稼げない」(椎葉氏)としてゲーム内に掲載しておらず、ユーザーへの直接課金で賄っていく考えを示した。
ソーシャルアプリの可能性については、「ニンテンドーDSと同じく、ライトユーザーが多い」という点が課題だと椎葉氏は話す。ゲームに対するモチベーションが低いため、「常に新しい遊びや価値観、非日常といったものを提供し続けないといけない」(椎葉氏)。ユーザーがすぐに飽きてしまう可能性も高く、繰り返しサイトを見てもらわないといけない広告モデルに頼るのは危険との認識を示した。
ただ、あらかじめ1000万人超のユーザーがいるというプラットフォームの規模は魅力的だとも話す。サービスがどの程度伸びるかは事前の予想が難しいため、最初から大きなインフラを用意するのは厳しく、Amazon EC2のようなサービスを利用するのがよいとのことだ。
ただ、Amazon EC2を全面的に採用することは勧めないとも話す。「トラブルが多く、APIが動かないとか、コマンドを入れたけれどもサーバが立ち上がらないといったような、よく分からないトラブルも起きる。信頼性が低いので、いまのブラウザ三国志の規模では厳しい」とのこと。また、英語での対応が必要になる点も課題だ。同社ではオーストラリア在住の人が作業にあたっているとのことだが、リアルサーバとAmazon EC2をうまく併用するのが望ましいとした。
ONE-UPの戦略は、数千万円の開発費をかけてオンラインゲームを開発し、高いAPRUで費用を回収するというもの。これは「RockYou! スピード★レーシング」などを手がけるロックユーアジアの戦略とは真逆だ。同社はあくまでもオンラインゲーム提供者であり、ソーシャルアプリにはこだわっていない。ゲーム提供先の1つにSNSがあるという考えだ。「オンラインゲームで単体として儲かるものでないとやらない方針にしている」(椎葉氏)
開発するゲームについても、「基本的には既存のゲームのアレンジの範囲で済まそうと思っている。いま成功している物の中で、意外な成功があったものをアレンジするというのが、成功に近い方法だ。突拍子もないものは成功すると目立つが、その背後にはいくつもの失敗作がある。それよりも、今持っている資産などを生かせないかと考えている」とリスクをできるだけ減らす考えでやっているとのこと。
ユーザーの課金方法については、現在ソフトバンク・ペイメント・サービスを利用しており、クレジットカードやWebMoney、Edyなどで決済できるようにしている。課金率は「普通のMMORPGと変わらないくらい」といい、mixiの公式課金システムであるmixiペイメントプログラムの利用は現状考えていないとのことだ。
「ブラウザ三国志は人と戦うゲームなのでユーザーの心を動かしやすく、寝ないで戦わないといけないくらいになっている。高いモチベーションを与えているので、外部の決済システムを使うことがユーザーの障壁にはなっていない」(椎葉氏)とのことで、ライトユーザーが増えるほど、mixiペイメントプログラムを使う意味が出てくるだろうと話した。
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