11月11日に開催されたカンファレンス「CNET Japan Innovation Conference 2008〜いよいよ本格化する動画ビジネス最前線〜」(CJIC 2008)にて、ドワンゴの顧問で、慶應義塾大学 政策メディア研究科 特別招聘教授の夏野剛氏は、ニコニコ動画のビジネスについて講演した。
ニコニコ動画の登録者数は、2007年3月のスタートから約1年半で約980万人、まもなく今月中にも1000万人に達するという(後に11月12日に1000万人を突破したと発表)。
10代や20代にはYouTubeなど外国系のサービスよりも圧倒的な支持を得ており、人口統計からいくと20代は3人に1人はニコニコ動画のユーザーだという。
しかし現実には、「ニコニコ動画は、30代以降の世代にはすごく過小評価されているメディア。その誤解を解いて、メディアパワーをお伝えするのもニコ動に参加した1つの理由」とドワンゴの顧問に就任した理由を説明した。
「980万人の登録者数がいるということは、980万人のメールアドレスを持っているということ。(他の動画サービスは)登録制にしていないところも多く、オープンプラットフォームという観点からはそのほうが便利なこともあるが、カスタマイズページを用意できるなど、登録制のメリットは大きい」と夏野氏は言う。
モバイル会員は2007年5月にクローズドベータをスタートして、255万9000人。「モバイルは、もっと強化する余地があると思っている。PC側のアップグレードが優先だが、少しずつ強化していきたい」と話す。
980万人のうち、有料のプレミアム会員は約21万人。プレミアム会員の特徴はプレミアム専用回線が用意されており、アクセス混雑時でも優先的に接続できることだ。
しかし、「すぐに設備投資をしてしまうので、無料会員でもすぐにアクセスできるようになると、有料会員の数字の伸びは緩やかになる。最近はまたお客様が増えて少し接続しにくくなったので、有料会員が伸び始めてきた。今の回線はほぼISP級で、おそらく日本で一番太い回線を引いているコンテンツサービス」と複雑な現状を明かした。
ニコニコ動画は単に動画だけでなく、コメントとともに動画を楽しめるのが特徴だ。「動画を共有しているのではなく、動画を見ているというその場を共有するもの」と夏野氏は言う。
他社との差別化について、「ほかは、動画のバリューが100%。ニコ動の場合は、動画のバリューは50%で、それをはやし立てるコメントのバリューが50%というところが最大の違い。単なる動画共有サービスではないし、そういう意味では競合ではない。むしろ補完関係にある」と独自の優位性について説明した。
1日の平均利用状況は、約6500万PV。コメント数は約260万で、動画のアップロードは5000件にも及ぶという。ドワンゴがもっとも重要視するのは、訪問者数(UU)で、UUは230万人/日。
「PVはサイトの構成によって変えられるが、UUはビジター数なのでそのままメディアパワーと考えられる。動画再生回数は1900万回で、平均滞在時間も34.5分。1PVあたりの滞在時間は3分14秒と非常に長い。これをなんとかビジネスにできないかというのが、私の大きなミッション」と黒字化への意欲を見せた。
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