情報通信政策フォーラム(ICPF)は11月17日、第5回セミナー「アメリカにおけるフェアユースの現状と日本への導入」を開催した。講師は成蹊大学法学部教授で米国弁護士の資格を持つ城所岩生氏。米国で導入されているフェアユースを日本でも導入するよう訴えた。
「フェアユース(公正使用)規定」とは、ある著作物の利用においていくつかの条項(非営利目的、利用著作物の潜在的市場価値の有無など)を満たした場合、権利者の許諾、あるいは利用料の支払いなく著作物を利用できるというもの。米国では著作権法の中に組み込まれ、検索エンジン関連ビジネスや動画共有ビジネスの成長を底支えしたとされる。
日本では、2008年3月にデジタル・コンテンツ有識者フォーラムが提言した「ネット法」案に組み込まれて話題を呼んだほか、政府の知的財産戦略本部による著作権改正案のひとつとして盛り込まれると言われており、2009年以降の制定が見込まれる。ただし、次期通常国会への提出は見送られることが確実視されているほか、一部の権利者などから制定に慎重な意見も出ており、今後の調整が必要とも見られている。
城所氏は、「米国のフェアユース産業は売上高4.5兆ドル、付加価値額2.2兆ドルで、米国GDPの約6分の1を占める。また、雇用者の8人に1人となる約1080万人がフェアユース産業に所属している。これが1990年代後半以降の生産性向上に拍車をかけ、一度は縮まった日本とのギャップが大きく開く結果となった」とし、日本にフェアユース規定がないことが問題だと話す。国内検索エンジン事業シェアの多くを海外事業者に占められていることなどを例に挙げ、その必要性を強く説いた。
また、フェアユース規定をベースに1998年、米国が制定した「デジタル・ミレニアム著作権法」(DMCA)を高く評価。「サービスプロバイダーの著作権侵害免責として用意されたセーフハーバ(安全な港)要件には、侵害通知を受けたら情報を削除し、その旨を契約者に通知することなどが明記されている。この法律によって動画共有サイトなどでは機械的な作業が可能となる。これに対し、日本のプロバイダー責任制限法では事例ごとに判断が求められるため機械的に作業ができず、また7日間侵害状態のまま放置されるなことになる」とし、現状の制度はサービス運営者だけでなく権利者にも問題だと懸念を示した。
「YouTubeは権利者の要請を受けて違法コンテンツを除去することで免責され、また権利者側もあえて黙認してパブリシティ効果を狙うことを選択できる。これはすでに、フェアユース規定にあてはまらない著作物利用形態だ。早くからフェアユースを導入してきた米国は、すでにフェアユース規定を超えた世界へと進んでいる」(城所氏)。法律改正に数年かかることも珍しくない日本の現状を踏まえ「フェアユースを導入することで改正が不要となる著作権関連ルールは多い。一刻も早い導入を望む」とした。
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