青少年のネット規制法、「目的は正当でも手段が大まかすぎる」--東大教授が苦言

永井美智子(編集部)2008年04月08日 19時22分

 インターネット業界に携わる事業者や機器メーカーなどに対して、青少年が有害情報を閲覧できないようにする措置を講ずるよう求める法案を自民党と民主党がそろって提出しようとしている。これに対して、インターネット上ではさまざまな意見が上がっている。

 おりしも4月8日、携帯電話から有害でないサイトを利用できるようにするための第三者認定機関「有限責任中間法人モバイルコンテンツ審査・運用監視機構」(EMA)が発足。モバイルコンテンツプロバイダーを中心に、法規制ではなく自主的努力によって、青少年を有害情報から守ろうとする動きが出てきている。

 自民党、民主党の法案について、EMA審査・運用監視委員会の委員で、総務省の「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」で座長代理を務める東京大学教授の長谷部恭男氏に考えを聞いた。


東京大学教授の長谷部恭男氏 EMAの設立会見で記者団の質問に答える長谷部恭男氏

 表現活動、および、それに関わるビジネス活動に規制が必要だとしても、法的な規制は最後の手段であるべきではないでしょうか。また、法的な規制を仮にするとしても、この場合は「青少年の保護」という目的に、適切に、ぴったりと合った手段が取られるべきであって、「目的が正当だから、手段のほうはかなり大まかなものでも良いだろう」という考え方は取るべきではありません。

 EMAもその1つですが、民間のノウハウなり、自主的な取り組みなりを育てて、(事業者が)「自分たちが良い方法を目指してがんばっていけば、それに応じて社会的にも認めてもらえる、活動の場も保障される」という形の仕組みを作り上げていくほうをまず考えていくべきだろうと思います。

 法的な規制でもって悪いものを排除しようという方向を進めると、何とかして網の目をかいくぐろうという方向にインセンティブを与えてしまうことになりかねません。そうすると、規制する側といたちごっこになり、どちらにしても社会的なコストがどんどんかかっていく可能性があります。それよりもむしろ、青少年の保護にきちんと配慮した取り組みをしていくことで社会的にも認知され、それが活動の保証にもつながっていくという仕組みが、まずは考えられるのではないでしょうか。

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