2007年に最も話題となったネットサービスの1つが「ニコニコ動画」だ。動画上に複数のユーザーがコメントをつけられる点が特徴だが、このサービスはオンラインゲームと解釈できる、と日本技芸のリサーチャーである濱野智史氏は述べる。
これは、3月14日、東京千代田区のベルサール神田で開催されたオンラインゲームとコミュニティサービスのカンファレンス「OGC 2008」における講演で語ったものだ。
濱野氏は「当たり前のことだが、ゲームもウェブも、情報技術を通じて設計、構築されている“環境(アーキテクチャ)”という共通点がある。今回は、その両者を隔てなく見るという視点を提示したい」とし、ゲーム名=ニコニコ動画、ジャンル=MMO-Virtual-RTS(多人数同時参加型バーチャルリアルタイムストラテジー)と例えて話を進めた。
ニコニコ動画内で行われている“ゲーム”の内容について、濱野氏は「プレーヤーが操作するキャラクターは“文字”であり、戦場となるフィールドは、実際の視聴時間はバラバラであるにもかかわらず、同じ瞬間を共有できるバーチャルリアルタイム(擬似同期)が実現した“動画=コメント再生画面”。その中で、タグや時報、ニコニコ市場など、観客の注目を奪おうとネタという弾薬を投下してくる別のキャラクターが存在している」と語る。
プレーヤーとなったユーザーは、それらのネタをできる限り拾い、メインの戦場に報告する。上級者になれば自らもネタ攻撃を仕掛け、いかにほかのプレーヤーに笑いや感動を与え、観客の「腹筋」や「涙腺」を崩壊させることができるかを競うというものだ。
濱野氏は、“プレーヤー”を4つのレベルに分類する。
レベル1は、たまたま見た動画や他ユーザーの予期せぬコメントに対し、「ちょw」「www」など、驚きや笑いといった反応をコメントとして書き込むユーザー。濱野氏は「こういった、反応を示すところから、ニコニコ動画にハマっていくユーザーが多いのではないか」と分析する。
レベル2は、「敵情報告」をするユーザー。動画に付けられた秀逸なタグや、関連商品を紹介する「ニコニコ市場」に面白い商品を見つけ、「タグ自重」「市場ww」などの反応を示すというもの。動画だけを見ているレベル1よりもニコニコ動画においての視界が広くなったユーザーであり、動画が流れるメインフィールドだけでなく、サブ的なフィールドに対しても反応するようになる。
レベル3のユーザーは、支援や補助に回る。動画に流れるコメント数には制限があり、人気動画になると初期のコメントは消えていってしまうため、過去にあった秀逸なコメントを保管しようと考える。これは疑似同期をいつまでも損なわないためのボランティアといえ、その場を面白い状態に維持しようと行動する。
そして最上級のレベル4は、「コメント職人」と呼ばれるユーザーであり、メインフィールドの最前線で、芸術的な字幕や弾幕を作っている。
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