映像・音楽に関する28権利団体からなる「デジタル私的録画問題に関する権利者会議」、および日本芸能実演家団体協議会加盟59団体は12月17日、都内で共同記者会見を行った。デジタルコンテンツのコピー回数を1回に制限するコピーワンスルールの改善に伴って私的録画保証金制度をどう取り扱うかという点について、社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が権利者会議らの質問状に答えない姿勢であることに対し、強い遺憾の意を表明した。
共同記者会見は、11月9日付けでJEITAに提出した公開質問状に対する回答期限が12月7日に切れたにも関わらず正式回答が寄せられていないこと、また回答期限当日付けでニュースサイト「INTERNET Watch」に掲載された記事において、JEITA側の担当者が回答する気がない旨の発言をしていることを受けて行われたもの。
また、12日付けでJEITA会長の町田勝彦氏から、「(18日の)私的録音小委員会の席上で発言する」旨の書簡が届いたといい、「組織としての一貫性に欠ける」と非難した。
コンテンツ複製を技術的に1度限りとするコピーワンスルールの緩和については、総務省情報通信政策部会「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」において「1世代限りコピー可能+枚数制限」という内容で合意。さらに8月に公表された第4次中間答申では、10回までのコピーを認める緩和策が示されていた。
一方、JEITAは10月16日付けのニュースリリースで「技術的にコピー制限されているデジタルコンテンツの複製は著作権者等に重大な経済的損失を与えるとは言えず、補償の対象とする必要はない」と記述。複製を考慮して一括的に対応する私的録画保証金制度が不要であると主張した。
これを受け、権利者会議らは「(第4次中間答申における)コピーワンス緩和の前提条件である『クリエイターへの適正な対価の還元』を可能とする制度は、私的録画保証金制度をおいて存在しない」と反発。この点を中心とした7項目について、公開質問状をJEITAに提出していた。
会見では、特にニュースサイト記事内におけるJEITA担当者の意見への非難が相次いで述べられた。「リリースでは補償の必要なしと言っておきながら、記事では『放送事業者が契約によって広告収入から還元すればいい』と補償の必要性を言及している。負担責任を回避するためだけに言を左右させている」(実演家著作隣接権センターの椎名和夫氏)、「公開質問状をプロレスの場外乱闘になぞらえているが、勝手に場外へ出て行ったのはJEITA」(日本映画制作者連盟の華頂尚隆氏)など厳しいコメントが出された。
一方、記者団からの質問では権利者団体に厳しい声も。「制度そのものが『消費者が悪いことをする』という性悪説に基づいたもの。性善説に基づいた制度設計はできないものか」と問われると、「デジタル技術の先行で、善悪の区別ができない青少年まで権利侵害に手を染めている時代。権利者だけが性善説に基づくのは難しい」(日本音楽著作権協会常任理事・菅原瑞夫氏)とした。
町田氏からの書簡については「明日(18日)の小委員会での発言に期待する」(椎名氏)と一定の評価を見せた。今後については「明日ですべてが決着するわけではない」としつつ、ルール策定のデッドラインとなる2008年6月に向けて調整を進めるとした。なお、コピーワンス緩和については、中間答申で合意した内容を目指して進めていく方針を明らかにしており、現状、JEITAの対応によって「白紙に戻す考えはない」(椎名氏)という。
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