新聞より早く速報を出す--MSと産経グループが組んだ「MSN産経ニュース」

岩本有平(編集部)2007年09月25日 17時55分

 マイクロソフトと毎日新聞社が共同運営する「MSN毎日インタラクティブ」の運営を9月30日で終了。合わせて産経デジタルと提携して新サイトを開設することを発表してから約4カ月。マイクロソフトが提供する新ニュースサイトの詳細があきらかになった。

 マイクロソフトと産経新聞社、産経デジタルは9月25日、ニュースポータル「MSN産経ニュース」を10月1日より共同運営することを発表した。

 産経新聞社代表取締役社長の住田良能氏は、今回の発表について、「新聞社にとってネットと紙媒体には高く厚い壁があるが、それを超える」と語る。紙媒体でビジネスを進めてきた新聞社に求められる役割について「紙かネットかという話でなく、報道機関としての使命をどう果たしていくのか、これに尽きる」と説明する。

 今回の提携はマイクロソフト側からの提案を産経グループが受けるかたちではじまった。マイクロソフト代表執行役社長のダレン・ヒューストン氏は「産経新聞グループは非常に革新的でウェブを活用していこうとしている報道機関」と期待を寄せる。

 MSN産経ニュースは、記事公開の早さと品質を追求した「ウェブ・パーフェクト」を目指すとしている。速報性の高いニュースについては、新聞の発行を待たずにウェブに記事を掲載する「ウェブ・ファースト」の姿勢を掲げており、産経新聞社では体制作りに向けての組織改革を実施。編集長4人の交代制で紙面とウェブのニュースを指揮することになっている。具体的なページビュー(PV)目標については明言しなかったが、産経デジタル取締役の近藤哲司が会見後に「だいたい毎日(MSN毎日インタラクティブ)と同程度」とコメントしている。

 コンテンツ面では、産経新聞社の記者による取材記事を中心にグループ企業である日本工業新聞社の「FujiSankei Business i」や、産業経済新聞社の「サンケイスポーツ」などの記事も掲載するほか、USA TODAYの翻訳記事も掲載する。また、記事の掲載期間については基本6カ月掲載とし、一部の記事に関してはパーマリンクをつけて削除期限を置かない。写真については一部を1024×768ピクセルで掲載する。また、ウェブの独自コンテンツも提供し、反応を見て新聞紙面での掲載も予定する。

「Live Seach サイドビュー」 記事中のキーワードをマウスオーバーすることでそのキーワードに関する検索結果がポップアップ表示される「Live Seach サイドビュー」

 サイトには「Live Seach サイドビュー」を導入する。これにより、記事中のキーワードをマウスオーバーすることでそのキーワードに関する検索結果がポップアップ表示可能になっている。

 また、Windows Live Messengerを利用して記事の内容を共有できる「メッセする」機能も搭載する。ただし、これらの機能を利用するにはInternet Explorerの導入が必要となる。

 このほか、Windows Vistaサイドバーガジェットにてヘッドラインの配信を行うほか、ブログパーツの提供も予定している。加えて、マイクロソフトのリッチインターネットアプリケーション(RIA)プラットフォーム「Sliverlight」を利用したコンテンツや5月に買収したオンライン広告会社aQuantiveの技術も導入し、サービスの強化をはかる。

 収益は広告収入のレベニューシェアを予定しており、有料サービスは現状では予定していない。収益面だけでなく、マイクロソフトとしては「オンライン技術のアピールの場」(オンラインサービス事業部事業部長の笹本裕氏)ともとらえており、同社の新技術を導入することに積極的な姿勢を見せる。

 産経デジタル代表取締役社長の阿部雅美氏はユーザーとの接点を強化できる点にも期待を寄せる。「レベニューシェアだけでない。PVは数倍に上がるし、上がらなければいけない。それによってさまざまなビジネスも生まれる」(阿部氏)。また、産経新聞社の記者についても「意識が時代に合致したものに変わっていく」と語る。

 新聞社が新聞より先にウェブにスクープを出す、という姿勢を打ち出したことは異例だが、阿部氏は「紙(新聞)が減るのは紙の理由」と説明。両媒体の特性を生かしたメディア作りを進めると語った。

ダレン・ヒューストン氏と住田良能氏 マイクロソフト代表執行役社長のダレン・ヒューストン氏(左)と産経新聞社代表取締役社長の住田良能氏(右)

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